2020 Fiscal Year Annual Research Report
Reconciliation after Dictatorship and Conflict: Lessons from Latin America
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17K03579
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大串 和雄 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90211101)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移行期正義 / 和解 / ラテンアメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には、2017年度と2019年度に実施した現地調査における聞き取りの内容を整理するとともに、現地で収集した資料と二次資料の分析を行った。それらの作業を通じて、以下のことが明らかになった。 和解問題は大きく分けて、国民レベルの「マクロの和解」と被害者/加害者の「ミクロの和解」とに分けられる。また本研究課題が研究対象とした4ヵ国の和解問題の構図は、コロンビアとペルーの「ポスト紛争型」とアルゼンチン、チリの「ポスト独裁型」に区別可能である。 両型に共通しているのは、民族紛争や宗教紛争の場合とは異なり、イデオロギー対立を主因としたラテンアメリカの独裁や武力紛争では、国民全体が集団間の対立に巻き込まれることがなかったという点である。このことが国民レベルの和解にとって好都合であることは言うまでもない。もう一つ両型に共通しているのは、特に政府の治安部隊や保守層の間で、政府側による人権侵害や戦争犯罪を否定または過小評価し、左翼側の暴力のみを非難するという態度である。この点は特に「ミクロの和解」にとって大きな障害になっている。 他方で、両型で和解問題の構図に違いもある。「ポスト独裁型」のほうは比較的単純である。アルゼンチンとチリでは、被害者の多くは政治活動や社会活動に従事していた人たちであり、まったく無関係の「巻き添え」は比較的少ない。両国とも人権侵害を非難する態度は保守層の一部にも共有されており、国民和解は大きな問題ではない。ミクロの和解については被害者も加害者も関心を示していない。これに対して「ポスト紛争型」では様相が異なる。武力紛争で巻き添えになる市民の数が多く、また紛争の再発防止が課題となるため、国民レベルの和解は国内の公論における争点としての重要性が高い。また「ミクロの和解」については、被害者の多様性を反映して、被害者側の態度も多様である。
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Research Products
(1 results)