2018 Fiscal Year Research-status Report
日本の国内冷戦における米英広報文化活動の実態と影響力の解明
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17K03583
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 嘉臣 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (10402950)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 冷戦 / 文化 / 日英関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、戦後日英関係を主に情報発信の観点から考察すべく、イギリス公文書館に所蔵される一次史料を主として用いた考察を行なった。その結果、以下の諸点につき実態の解明が行われた。占領期以降、1970年代までにおける日英関係の史的変遷について。日本のいわゆる「戦後民主主義」に対してイギリス外務省がもった認識とその評価について。戦後日本におけるイギリスの情報発信工作の実態について。戦後日本における情報発信工作分野での英米協力の実態について。 なお、当該年度に考察対象となったのは、情報発信工作を主導したイギリス外務省の情報調査局(IRD)が設置されたのが1948年であり、解体されたのが1977年であるため、それに対応するアトリー政権期以降からキャラハン政権期までのイギリスである。この間、IRDは駐日英大使館と協力して日本における情報発信を展開したが、その問題意識、活動対象、手段は多様であった。 一連の考察の結果、具体的にはIRDが日本で展開した活動の目的が変遷したこと、その背後にはIRDおよび駐日英大使館の日本認識の変化があったことが明らかになった。また、IRDが活動のために用いた手段によっては、駐日英大使館からの批判を受けたこと、その批判がIRDの日本以外の地域での活動への含意を持ったことを明らかにした。さらに、駐日英大使館の対日認識が、イギリスの対日政策の前提となったことも明らかにされた。 以上の調査結果は、論文として執筆・投稿し、公開される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、戦後日本の政治秩序を支えた米英の情報発信活動の実態、およびそれを支えた理念の形成と変容過程を考察の対象とする。具体的には以下を検討する。 ・戦後日本における情報分野での英米協調の実態 ・英米間の対日認識の相違 ・日英米間の情報分野での協力関係の実態
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Causes of Carryover |
当初、当該年度に2度の史料調査を予定していたが、先行研究の調査に時間をかけた上での調査の必要性を感じ、実際の調査は1度に留めたため。
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