2019 Fiscal Year Research-status Report
日本の国内冷戦における米英広報文化活動の実態と影響力の解明
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17K03583
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 嘉臣 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (10402950)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 冷戦史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度は、前年度に引き続き、戦後日英関係を中心として、イギリス公文書館所蔵の一次史料を使用しながら、イギリスの対日プロパガンダ政策の実態を考察した。その結果、イギリスの対日政策が、そのアジア政策の大きな枠内において、いかに位置付けられるかが解明された。 戦後イギリス外務省は、東南アジアにおける自らのプレゼンスの低下に直面し、当初は潜在的な競争相手である日本にして厳しい対応を示したが、やがて脱植民地化を迎える当該地域における利益確保のためのパートナーと認識することとなり、コロンボ計画やGATT加盟についても支持を与えるに至った。これらの事実は、内外の先行研究ですでに明らかにされていたところではあるが、この度の研究によって、パートナーと認めるに至った日本が対外政策上中立化することは、イギリスが重視する東南アジアに対する悪影響を与えることを懸念する外務省は、おもに東京を中心として積極的な対日プロパガンダを進めた。その手段は様々であったが、いずれにせよアメリカの対日プロパガンダとは独立した形で進められた。このように、1950年代半ばにおける対日プロパガンダ政策は、日本の国内社会についての認識に左右されたことが明らかにされた。 これらの一連の成果は、冷戦史に関する国際ジャーナルに投稿された。また、一連の成果を元にモノグラフを作成する予定であり、本年度末にかけて、イギリスの学術出版社と出版協議に入ることを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、戦後日本における英米の情報政策を、その類似点と相違点に注目しながら考察する。 その際、英米による日本の戦後民主主義に対する評価も併せて検討する。
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Causes of Carryover |
当初、3月に海外出張を行う予定であったが、新型コロナウィルスによる影響で出張を取りやめたため、次年度に使用することとした。
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