2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の国内冷戦における米英広報文化活動の実態と影響力の解明
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17K03583
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 嘉臣 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (10402950)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 冷戦史 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、前年度までの研究を基礎に、戦後日英米関係を中心として、日本における英米両国のプロパガンダ政策の実態を検討した。その結果、1960年代以降、駐日イギリス大使館を拠点とした対日プロパガンダ活動のあり方は、1950年代までのそれから大きく変化したこと、ロンドンのイギリス外務省本省と異なり、駐日イギリス大使館の消極的な姿勢に影響を受けたことが、明らかになった。とくに、歴代の駐日イギリス大使たちは、日本が西洋の国家と異なることや、よって民主主義の哲学を広報しても効果はないと認識したこと、それよりも伝統的な「イギリスの投影」政策に基づいて、イギリスや西側諸国との関係を維持した方が利益を受け続けられることを強調した方が効果的と判断したことが、明らかになった。 外務省本省におけるプロパガンダ活動に責任を持つ情報調査局(IRD)と異なり、各地で現地情勢を直接分析することのできる大使館からプロパガンダ冊子の配布について異議がなされたことは、IRDの活動が一枚岩的になされたのではなく、様々な軋轢を抱えていたこと、とくに非西洋諸国において活動の困難を抱えていたことを示している。また、IRDは各地の実情を踏まえてオーダーメイドでプロパガンダ冊子を制作することも重視したが、それには限界もあり、各地の大使館は外務省本省で作成された冊子に不満を抱えていたことが明らかになった。 これらの研究の成果は、2021年2月に、冷戦史に関する国際誌であるCold War Historyのonline版に掲載され、後日出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスによる影響で海外出張が行えなかったため、令和3年度にその実施可能性を探っている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、戦後日本における英米のプロパガンダ活動の実態を検討する。令和3年度は占領期を中心として分析を行う。 新型コロナウィルスの影響については、随時状況を注視するとともに、海外出張の可能性について検討する。海外出張が行えない場合、国内で閲覧可能な資料を中心に研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスによる影響で出張が行えなかったため、令和3年度にその実施可能性を探っている状況である。
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