2021 Fiscal Year Research-status Report
日本の国内冷戦における米英広報文化活動の実態と影響力の解明
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17K03583
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 嘉臣 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (10402950)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 冷戦 / プロパガンダ / 日英関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、前年までの研究成果を踏まえ、日本占領期における駐日イギリス代表部の対日広報政策の概要と特質を検討した。その結果、1946年ごろより駐日イギリス代表部は日本社会に向けた積極的な広報活動を開始したこと、その際には代表部に設置された情報部(Information Department)長を務めたSir Vere Redmanの功績が大きかったことが示された。また、代表部はアメリカ人の占領当局よりも日本の政治的・社会的実態を熟知していることを自負しており、占領当局が発信する情報の量に対して駐日イギリス代表部が発信する情報の質の高さを誇っていたことが明らかにされた。くわえて、イギリスで構築されつつあった福祉国家は日本社会の関心が高く、そのため福祉サービスの実態に焦点を当てた広報政策が展開されたことが示された。同時に、イギリスにおける戦後復興の様子は、同じく占領下での復興を模索しつつあった日本との同質性を感じさせるテーマであり、この観点からも積極的な情報発信がなされたことが明らかになった。 日本社会におけるイギリスへの関心の高さは、1949年に日本語雑誌『あるびよん』の発刊に繋がったが、これも駐日イギリス代表部による支援を受けて発刊されたものであったことが示された。『あるびよん』に体現される戦後日本の対英関心の高さを基礎として、イギリスは日本の労働組合関係者をイギリスに招いたほか、ブリティッシュ・カウンシルを通した文化交流を進めたことも明らかにされた。 これらの研究成果は、国際史に関する国際学術誌に投稿された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスによる影響で海外出張が行えず、よって令和4年度にイギリス公文書館での調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、戦後日本におけるイギリスの広報政策の実態を、アメリカのそれとの比較を念頭に置きつつ実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスによる影響で海外出張が行えなかったため、令和4年度に実施する予定である。
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