2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03615
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒瀬 一弘 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (80396415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 構造変化 / 多部門モデル / 要素価格 / 異質で再生可能な資本 / カルドアの事実 |
Outline of Annual Research Achievements |
経済成長は経済学において最も重要な研究領域の1つであり,既に多くの先行研究成果が存在している。それらの多くに共通している特徴は,第1に現実の市場には異質な財が複数存在しているが,そのことを軽視する傾向が強いこと,第2の特徴は労働・土地以外の生産要素(資本)を生産するようになるということが資本主義的成長過程の本質であるにもかかわらず,そのことを考慮に入れている既存研究が極めて少ないことである。つまり,既存の研究は異質な資本が複数存在し,それらが生産可能であるということを考慮していなかったという特徴を有している。こうした特徴の下で,定常状態が持つ性質(カルドアの事実)が分析されてきた。 現実の経済成長過程では,いわゆる「ペティ=クラークの法則」が示すように,経済の構造は常に変動している(構造変化)。構造変化と上述した特徴を有する経済成長論が示す定常状態とが整合的であるのかが注目され,どのような条件の下で構造変化がカルドアの事実と整合するのか近年盛んに研究されてきた。しかし,それらも異質な資本が複数存在し,それらが生産可能であるということは射程外に置かれたままであった。また近年の実証研究では,物的資本構成の変化にも一定の法則が存在していることが指摘されているが,そのことも既存研究では考慮されていない。 本研究は,これまで射程外に置かれてきた要因を構造変化の起こるモデルの中に導入し,物的資本構成の変化を考察できるように拡張することを目的にしている。さらに,熟練労働者とある種の資本が補完的であるために所得格差が拡大するという見解の検証,そしてそうしたモデルがカルドアの事実と整合するかも分析する。 本年度はカルドアの事実と整合的な構造変化が起こるモデルに異質な再生産可能な資本を導入する可能性を吟味した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異質で再生産可能な資本の重要性は古典派やマルクス経済学によって強調されてきた。そうした経済学を数学的に定式化した文献を広くサーベイした。異質な再生産可能な資本の存在を動学的なモデルに導入する際に解決すべき課題を把握した。
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Strategy for Future Research Activity |
異質な再生産可能な資本を構造変化が生じるモデルへの導入を試みる。さらに,それらがカルドアの事実と整合するための条件を求める。
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Causes of Carryover |
海外学会への出席を予定していたが参加することができず使用計画を変更したため次年度使用額がわずかに発生してしまった。次年度,国内での研究会などへの参加を予定より増やすことによって消化する予定である。
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Research Products
(4 results)