2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03615
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒瀬 一弘 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (80396415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パシネッティ均衡 / 反パシネッティ均衡 / 多部門モデル / 不変の価値尺度財 / 資本理論のパラドックス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究の成果は主に2つの問題に関連している。1つは構造変化が起こる経済における価値尺度の問題である。もう1つは,異質な労働ではなく異質な経済主体が存在する経済において所得・資産の格差はどのようになるという問題である。 技術変化や所得分配,需要構造が変化すると価値尺度の価値も変化してしまう。これは19世紀から分かっていた問題であるがこれまでは技術は変化しないという仮定の下で所得分配が変化しても価値が変化しない尺度の存在だけが明らかになっていた。本研究ではどのような要因であれ技術が変化しても所得分配が変化しても価値が不変に保たれる尺度の存在条件を明らかにした。これは19世紀以来の経済学上の問題を解決したと言ってよいと思われる。ただし,その条件は新しい技術が時間とともに現れる「技術進歩」を含んでいないという弱点が存在する。 異質な経済主体(資本家階級と労働者階級)が存在する経済には2つの定常均衡が存在することが明らかになっている。1つは資本家階級も労働者階級もともに存続し,両階級とも資本を保有する定常均衡と資本家階級が消滅し労働者階級だけが残り全ての資本が労働者によって保有される定常均衡である。どちらの均衡が得られるかは,それぞれの階級の貯蓄率と所得分配に依存している。この種の分析はこれまで貯蓄率が外生的に所与である集計されたマクロモデルによって行われてきたが,本研究では貯蓄率を内生化し技術が複数存在する多部門モデルによって分析を行った。利潤率の上昇によってより資本集約度の高い技術が費用最小化技術になる逆説的な現象と均衡のタイプを同時に分析した。貯蓄率を内生化したのが本研究の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
異質な労働を含めたモデルを構築する予定であったが,その前に異質な経済主体(資本家階級と労働者階級)をモデルに組み込む作業を行ったためやや遅れた生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルに異質な経済主体を導入することは当初の研究計画にはなかったが,ピケッティの『21世紀の資本』以来,偏った資本の保有が問題視されている。無論,それは異質な労働と全く無関係ではないが,来年度は異質な労働のモデルへの導入より異質な経済主体の分析に重きを置きたい。 今年度の異質な経済主体の分析を速やかに海外雑誌に投稿するととともに,定常均衡の安定性・移行過程の分析を行う。
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Causes of Carryover |
英文校正をかける回数が当初の予定より1回少なくなってしまったのが原因である。論文を速やかに完成させ,英文校正を依頼したい。
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Research Products
(4 results)