2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03615
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒瀬 一弘 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (80396415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Pasinetti均衡・双対均衡 / 多部門モデル / 資本理論のパラドックス / 資本家・労働者行動のミクロ的基礎付け / 再生産可能な資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
所得・資産分配の分析には個人のミクロ的行動に関する仮定が重要であることが指摘されている。どのような仮定を置くかによって,モデルを3つに分けることができる。1つ目は全ての個人が無限期間生存するモデル(Ramseyタイプ),2つ目は世代重複モデル(OLGタイプ),3つ目はそれら2つの混合(つまり,Ramseyタイプの行動をとる個人とOLGタイプの行動をとる個人の両方が存在すると仮定する)である。3つ目のモデルが最もデータにフィットすることから,既に多くの理論研究の蓄積が存在する。 それらの先行研究の全て資本は同質で本源的な要素であることを前提にしている。Pikettyが指摘したように,物的資本の蓄積が所得・資産の不平等な分配に大きな影響を与えることに鑑みれば,先行研究は満足できる前提の上に立っているとは言えない。 本研究では資本を異質で再生産可能な財からなると想定し,3つ目のタイプのモデルを用いて,①資本家と労働者が共にRamseyタイプである場合と②資本家がRamseyタイプで労働者がOLGタイプの場合の定常均衡分析を行った。この種のモデルには資本家と労働者が共存する均衡と資本家が消滅する均衡の2種類の均衡が存在する。前者の均衡では,ミクロ的行動が①でも②でも利潤率と成長率の間に同じ関係が成立し,しかもその関係は技術から独立する。後者の均衡の場合には,利潤率と成長率の関係は①と②で異なるものの,両者が技術に依存することは共通している。 異質で再生産可能な財からなる資本を考慮した場合,逆説的な現象が生じることが指摘されているが,本研究では①から②もしくは②から①への均衡のスイッチと共に定常均衡における逆説的な現象も併せて分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル自体は完成しているが,2,3月に研究会・学会等が中止になったため発表はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度完成させたモデルの安定性と移行動学の分析を進めると同時に,昨年度改正させたモデルを国内外で発表し,モデルの完成度を上げていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度,海外出張に行けなかったことと,2,3月に予定していた研究会・学会がキャンセルされたため。
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Research Products
(3 results)