2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03615
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒瀬 一弘 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (80396415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Multi-sectoral model / Heterogeneous capital / Economic growth / Kaldor's facts / Structural change |
Outline of Annual Research Achievements |
産出量・雇用・消費に関する構造変化の規則的なパターンが多くの国々の経済成長において観察されているが,それらの研究が資本を同質な要素として扱い,物的資本の蓄積に関する規則性を看過している。そこで,本研究では異質な資本財の存在をモデルに組み込んだ多部門モデルを構築し,構造変化に関する考察を深めることを目的としている。 今年度の成果は,昨年度ディスカッションペーパーとしてまとめた構造変化とカルドアの事実(多くの先進国の経済成長プロセスにおいて観察される規則的なパターン)の研究成果を,改訂を重ねた結果,国際雑誌に掲載されたことである。 明らかにしたことは,以下の点である。第1に,既存研究の特徴は同質な資本をすべての部門で投入することを前提としているため,物的資本構成の変化と経済成長の間には有意な関係があることを示す実証研究があるにもかかわらず,その成果を取り入れることが困難であるという欠点を有する。第2に,既存研究は均斉成長という概念を拡張し,その下での一意の安定均衡の存在・収束をもってカルドアの事実の成立とみなしているが,その方法では異質な再生産可能な資本財をモデルに導入することが困難である。なぜなら,資本が異質な財の束からなる場合,利子率の変化に伴って価格・数量ともに変化するため,集計した資本価値と利子率の関係は極めて複雑になるためである。経済成長に伴う物的資本構成の変化とカルドアの事実の関係を分析の射程に入れる場合は,モデル化の方法を刷新する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内・国際学会。研究会に参加しにくい状況が続いているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により均斉成長という概念を拡張し,一意の定常解の存在・収束をもってカルドアの事実とみなす方法の欠点が明らかになった。異質な資本を考慮する場合に,どのような状態をカルドアの事実の一次近似と見做すのかということから根本的に考え直し,それに基づきモデル化を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス蔓延のため,国内外の学会・研究会などに参加しにくい状況が続いているため,旅費の消化が予定通り進まなかったため。今年度は事態が好転することを望む。
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Research Products
(1 results)