2019 Fiscal Year Research-status Report
サービスを含む企業内貿易に関するミクロ計量実証研究
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17K03677
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
冨浦 英一 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40273065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 萬里 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (40424212)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 企業内貿易 / 企業ミクロデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
企業内貿易について、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)で実施されたサービスと財の貿易を分けた企業内貿易に関するサーベイ調査によるミクロデータを活用した分析に加え、企業の海外活動を把握した政府統計(海外事業活動基本調査、企業活動基本調査)のミクロ・パネルデータも併せ用いて、企業内貿易を決める要因に関する計量実証研究を進めた。特に、垂直的海外直接投資の経済理論でも示唆される産業レベルでの投入産出関係では説明できない部分に関する解明に取り組んでいる。先行研究においてもこの点は疑問として残されており、解明が待たれているところで、本研究の成果を一連の先行研究と関連付けることができれば一定の貢献につながると期待される。推定結果に解釈を与える過程で、発展途上国の制度にも関係する契約環境の影響が示唆された。 この他、企業内貿易の前提となる海外直接投資の重要な部分を占めるようになった国境を越えた合併、企業内貿易にも影響する工場の立地と国際貿易の関係、企業内貿易を担う多国籍企業活動にも影響する外国人労働者や輸入の制限に対する個人の反応についても分析を行い、企業内貿易に関連する企業の境界と国境の関係について、国際査読学術雑誌(Review of International Economics, Japan and the World Economy)に掲載された論文にとりまとめるなど、データに基づく一定の知見を得た。また、グローバル経済に大きな影響を与える第4次産業革命や新型コロナウイルスについて、日本語及び英語の書籍への寄稿論文において、それぞれ展望する中で国際貿易への影響を論じ、企業内貿易にも言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初に立てた計画を修正しつつ研究を進めてきたが、研究成果のとりまとめ段階になって、RIETI独自調査と政府統計という複数の異なるデータ間での整合を先行研究との関係も見ながら一層精緻に点検する必要が増したことに加え、今年度後半は研究代表者の事情により一時的に十分な研究時間がとれなかった。こうしたことから、研究期間を延長して十分な成果をあげることとしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの時点で、企業データの分析はある程度は進んでいることから、今後は複数のデータから得られた分析結果を相互の整合性に十分留意しつつ精緻に点検し、先行研究結果との関係についても説明を整理した上で、成果のとりまとめを行う予定である。その過程で、外部の研究者の知見も吸収して、より完成度の高い成果につなげることを目指す。 推定結果の解釈に当たっては、特に、近年盛んに研究されている契約環境あるいは契約に伴う摩擦(contractual friction)に関する議論と結び付けることによって、企業内貿易が限られている現状に経済学的説明を与えることが可能になるのではないかと見込んでいるところである。具体的には、特に、多国籍企業の海外展開先の地域的違い(特に契約環境が必ずしも十分に整備されていない発展途上国と先進国の違い)といった要素を勘案すれば、先行研究との関係を整理可能となるとの見通しを現時点で得ており、今後の研究成果とりまとめ作業を推進する計画である。 企業内貿易における財とサービスの違いについては、政府統計の海外事業活動基本調査においては合算されているため詳細な議論には限界があるが、財とサービスを区分した詳細なRIETI調査から抽出できた範囲での傾向をとりまとめることで、従来の米国のデータや日本の親企業のデータに基づく先行研究に比べ、一定の貢献になるものと期待される。
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Causes of Carryover |
研究成果のとりまとめ段階になって、複数の異なるデータ間での整合や先行研究との関係について精緻に結果を点検する必要が増したことに加え、研究代表者の事情により今年度後半に研究に割く時間が限られたため、研究期間を延長して十分な成果をあげることが適切であると判断するに至った。最終成果とりまとめ前の研究成果の発表や、最終成果に反映させるための関連研究を行っている内外研究者との意見交換等、一部の研究活動を次年度に変更する計画とした。
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