2018 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な生物多様性農村社会共創のための経済システム設計
Project/Area Number |
17K03679
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
青木 恵子 九州大学, エネルギー研究教育機構, 准教授 (10546732)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤井 研樹 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (20583214)
工藤 隆則 摂南大学, 理工学部, 講師 (80736695)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自発的・持続的に稀少性生物を育み、生物多様性農村社会を共創する経済システムの設計を理論・実験室実験・エージェントシミュレーション・フィールド調査・社会実験の相互フィードバックから検証することである。稀少性生物の保護を含め、生物多様性を維持するための農業は国家的補助政策を過度な拠り所とし、それを農村社会が自発的かつ持続的に内包し、農村の主幹産業と共生させるために必要なプラットフォームが未だ整っていない。この課題解決のために、本研究では、稀少性生物の代表例たる朱鷺を育む農村である佐渡とその主幹産業である稲作をモデルケースとし、(1)消費者の生物多様性保全への価値を計測し、(2)不確実性下での生物多様性保全に対する生産者努力を動学的に検証し、(3)持続可能な生物多様性農村社会共創のための経済システムを提言する。 本年度は課題1の実験結果の頑健性(仮想バイアス)を検証するため、同内容を全国規模のインターネット調査によって検証した。また、課題2では初年度の理論モデルと課題3のフィールド調査の結果を踏まえて生産関数などをリファイメントし、理論モデルの帰結を被験者実験によって検証し、シミュレーションした。課題3では、課題2の実験システムを基盤として、社会的に最適な生物の数へと近づけるための経済システムを検証した。 インターネット調査からは食味や色や外見などよりも生産のために使われているエネルギーが重要であることが分かった。また、消費者は有機栽培に価値を置くことが分かった。さらに、生産関数としてエネルギーを投入要素として入れ込んだコブダグラス型の生産関数をもち、エネルギーの消費選好を反映したマルチエージェントの相互作用から、バイオマスの普及率が太陽光よりも上がる場合に、生物多様性が最大となる、効用関数が存在することを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに実験が進んでいるため
|
Strategy for Future Research Activity |
課題3に関するマルチエージェントシミュレーションと社会実験を実施し、3年間の成果をまとめる。まず、実験結果を定性的にサポートするために先に開発したシミュレーションに被験者の行動パタンーンを反映させて、シミュレーションを行い、結果を比較・検証する。次に、社会実験では各システムが需要に与える影響を検証することに主眼を置き、フィールド実験を行う。 実験因子として制御する制度は課題2の4つの情報制御因子を基礎とし、次のように現実的整合性を担保する。①第三者認証では、朱鷺との共生認証マークと有機栽培のオーガニックラベルを組み合わせる。②生産者の自主規制では、生産者が朱鷺のために行っている努力をパンフレットで紹介する。③消費者同士の情報交換制度では、佐渡米に対する情報交換を可能なSNSや店頭掲示板を立ち上げる。④生産者による生産過程を公開する制度では、佐渡米の製造過程を写真、ビデオに収め、生産者から消費者に向けてメッセージを送ってもらい、それを店頭で流す。以上の制御因子下で販売する米の容量を1kgとして、情報公開制度と販売利益の関係を検証する。フィールド実験からPOSデータを取得し、データはパネル分析し、Difference-in-Difference推定からトリートメント効果を検証する。
|
Causes of Carryover |
来年度のフィールド実験のために本年度はマルチエージェントシミュレーションにおいて基礎設計のみに特化したため、来年度に実験費用を回すから。
|