2018 Fiscal Year Research-status Report
比較優位の決定要因-付加価値輸出の実証分析を通じて-
Project/Area Number |
17K03729
|
Research Institution | Tama University |
Principal Investigator |
下井 直毅 多摩大学, 経営情報学部, 教授 (40409818)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 哲也 拓殖大学, 政経学部, 教授 (20603468)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | グローバル・バリュー・チェーン / 付加価値貿易 / 国際産業連関分析 / 比較優位 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、グローバル・バリュー・チェーン(GVC)への関わり方と比較優位の差を産み出している要因の関係を分析してきた。このGVCへの参画の程度を示す指標として、経済協力開発機構(OECD)が算出している「GVC参加指数(Global value chain participation index)」があるが、服部・下井(2016)では、付加価輸出とGVC参加指数の間に正の相関があり、両者の相関が徐々に強まっていることを確認した。これを受けて、下井・服部(2018)では、更新された国際産業連関表(The World Input-Output Database:WIOD)のデータを用いて、付加価値貿易における付加価値輸出の金額を算出し直した。具体的には、WIODの2016年リリースのデータは、2000年~2014年のもので、対象となる国は43カ国およびその他世界であり、対象となる産業も56産業というものである。下井・服部(2018)では、2年ごとの43か国とその他世界の56の産業について、付加価値輸出額を推計した。そして、この推計した付加価値輸出額を用いて、顕示比較優位指数を算出した。その上で、従来の顕示比較優位指数との比較検討を行った結果、両者の間にはいくつかの乖離が見られるという結果を得た。 成果の発表については、「加価値貿易と比較優位の決定要因について」と題して、日本国際経済学会の第77回全国大会(2018年10月13日・14日に開催、於:関西学院大学)における第15分科会において、研究発表を行った(このときの討論者は、藤川清史氏(名古屋大学)、座長は猪俣哲史氏(日本貿易振興機構アジア経済研究所))。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
更新された国際産業連関表(The World Input-Output Database:WIOD)のデータを用いて、付加価値貿易における付加価値輸出の金額を算出し直したものの、GVCの「長さ」を推計し、GVCに参加の仕方が、各国の比較優位にどのような影響を与えるのか実証的な分析を通じてあぶりだす予定であったが、この「長さ」の推計として、実証分析を試みるものの、適切な説明変数をあぶりだすことに時間がかかっている。 今年度中に適切な説明変数をあぶりだし、さらに、比較優位と雇用の関係を分析する予定である。GVCが構築される中で、GVCと補完的な国内労働市場がどうあるべきかという雇用のあり方はとても大切である。各国の国内の労働市場の特徴がどのような影響を与えるのかを実証的に明らかにすることで、GVCの構築と補完的な国内労働市場の特徴を明らかにし、GVCが構築される中で国内の雇用制度改革をどのように進めていくべきなのか、逆に、比較劣位とされる産業では、どのような雇用対策を考えたらいいのか、といった比較優位あるいは比較劣位の産業と雇用の制度や促進の方法について模索し、政策提言を試みたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、比較優位と雇用の関係を分析する。GVCが構築される中で、それと補完的な国内労働市場はどうあるべきかという雇用のあり方は、非常に大切な問題である。従来の比較優位の決定要因についての実証分析でも、労働市場が比較優位の決定要因として重要な役割を果たしていることが確認されている。他方、Timmer et al.(2014)では、付加価値貿易の研究に基づいて、生産工程間の国際的な分業が拡大している中で、新興国では資本への特化が進んでいる一方で、高所得国では高技術労働への特化が進む傾向が見られることを指摘している。そこで、本研究では、GVCが構築される中で、付加価値貿易から見た比較優位に対して、各国の国内の労働市場の特徴がどのような影響を与えるのかを実証的に明らかにする。これにより、GVCの構築と補完的な国内労働市場の特徴を明らかにし、GVCが構築される中で、国内の雇用制度改革をどのように進めていくべきなのか、逆に、比較劣位とされる産業では、どのような雇用対策を考えたらいいのか、といった比較優位あるいは比較劣位の産業と雇用の制度や促進の方法について模索し、政策提言を試みる。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、次年度が最終年となることから、海外誌や国内誌への投稿やそうした投稿の際の費用をねん出できるように、次年度の使用額を増やそうと考えたためである。また、具体的な使用計画については、海外雑誌への投稿を考えていることから、そのための英文にする際のスペルチェックや場合によっては国内有識者との意見交換のための発表に使用したいと考えている。また、海外誌や国内誌へ投稿するにしても、その審査には時間がかかることから、それまでの間でも成果物としての報告書を作成できるようにしたいと考えている。
|