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2017 Fiscal Year Research-status Report

近世ロンドンの給水事業に関する研究

Research Project

Project/Area Number 17K03849
Research InstitutionTakasaki City University of Economics

Principal Investigator

唐澤 達之  高崎経済大学, 経済学部, 教授 (10295438)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywordsロンドン / 給水事業 / 中世後期 / 近世
Outline of Annual Research Achievements

2017年度は、中世後期から近世初期にかけてのロンドンにおける給水事業会社設立以前の給水システムに関する研究を中心に進めた。ロンドンのおかれた自然地理的条件に留意しつつその取水源(河川とその支流、井戸や湧水)とその利用のあり方(飲料用、商工業用)の概要を把握した。そのうえで、都市自治体(ロンドン市)が、河川のアクセスに関する規制や、貯水槽の設置・管理など、給水システムのガバナンス上大きな役割を果たしていたこと明らかにした。また、水汲み・運搬労働のあり方にも着目し、これらの労働が主として女性や奉公人に担われていたこと、一定の社会的分業の展開に伴い職業として水運搬人が成立し、ギルドも形成されたことが明らかとなった。貯水槽の建設は、都市自治体およびその主要な構成員である富裕な市民層によって担われ、またその利用規制は、都市住民の生活用水としての利用を優先したものであり、一種の「モラル・エコノミー」の原理に支えられ、都市支配層による家父長的支配=統治の正当性に関わるものであった。
こうした中世後期以来のロンドン給水システムは、16世紀後半を境として、都市人口の急増に伴う水需要の増大への対応が困難となり、貯水槽の管理運営の民間事業者への委託、ロンドン市が有するロンドン近郊の水源に対する権利の民間への譲渡など、いわば民営化の方向に向かっていく。こうした状況を決定的に進めたのは、ロンドン・ブリッジ・ウォーターワークス・カンパニーやニュー・リバー・カンパニーに代表される私企業による給水事業経営であった。このことは、給水システムの技術的転換や制度革新を意味するだけでなく、都市の統治原理の転換をも意味するものであり、2018年度以降の研究を展望するひとつの視点を得ることができた。
なお、これらの研究成果の一部は、イギリス中世史研究会において報告する機会を得た。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

中世後期から近世初期にかけてのロンドンにおける給水システムの概要について把握することができ、また、17世紀以降の給水システムの転換の意義を展望する視点を得ることができた。2017年夏に実施したロンドン・メトロポリタン・アーカイヴズにおける史料収集では、中世後期から近世初期にかけての時期のマニュスクリプト史料について当初期待していたほどの体系的でまとまった量の史料を収集することはできなかったことは否めないが、そのかわり給水事業会社経営に関する史料を先取りして収集することができた。

Strategy for Future Research Activity

2018年度は、当初の計画通り、2017年度の研究成果を論文としてまとめていきたい。また、給水事業会社の史料収集とその分析を本格的に進める予定である。個々の給水事業会社の経営史的分析を進めるだけでなく、都市統治の転換という視点を意識しながら、給水事業会社の都市社会への受容のされ方についても明らかにしていきたい。

Causes of Carryover

史料収集のためのロンドン滞在期間が、勤務先の公務により当初の計画より短くなったため。次年度は、ロンドン滞在期間を今年度よりも少し長めに確保したい。

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Published: 2018-12-17  

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