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2017 Fiscal Year Research-status Report

19・20世紀世界経済統合のなかのドイツ植民地経済論

Research Project

Project/Area Number 17K03855
Research InstitutionKomazawa University

Principal Investigator

浅田 進史  駒澤大学, 経済学部, 教授 (30447312)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
Keywordsドイツ / 植民地主義 / 帝国主義 / グローバリゼーション
Outline of Annual Research Achievements

本年度は予定通り、ドイツ植民地政策における植民地労働論をテーマに調査を進めた。先行研究では、個別の植民地ごとの実証研究のほか、1902年以降3度にわたって開催されたドイツ植民地会議での植民地労働をめぐる議論、あるいはプロイセン東部での対ポーランド系住民に対する政策とアフリカ植民地での労働政策との思想的連関などが議論されてきた。
本研究プロジェクトでは、とくにドイツ植民地労働論を、人種イデオロギーと世界経済秩序が交差する問題として、植民地間の労働力の再配置をめぐる議論を分析する。この論点については、ゼバスティアン・コンラートが2006年に公刊した著書Globalisierung und Nationのなかで、ドイツ帝国およびドイツ植民地への中国人労働者の導入について論じていた。また、ドイツ・中国関係史のなかでも、アンドレス・シュテーンが2014年にドイツ外務省文書のなかでドイツ植民地主義とドイツの南洋植民地への中国人労働者の導入に関する論文を発表している。
これらの先行研究を念頭に、本プロジェクトでは、ドイツ外務省政治文書館に所蔵されている北京在住中国公使館史料のなかの「ドイツ植民地および保護領へのクーリー貿易、クーリー移民」と題された一群の史料を収集した。すでに、上述のゼバスティアン・コンラートが指摘していた点であるが、この収集の過程でドイツ植民地のみならず、19世紀末から20世紀初頭にかけてドイツ船舶会社がオランダ領インドを中心に、東南アジアへ中国人契約労働者を輸送する事業に大きく関与していたことに関する一連の史料群を分析し、収集することができた。この問題は、ドイツ植民地政策がたんにドイツ植民地を対象に展開したのではなく、当時の植民地支配を前提とした世界経済秩序と密接に関連していたことを示すものである。これらの一群の史料について、あらためて次年度以降、分析していく。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度の最大の目的は、ドイツ植民地労働論について、人種イデオロギーと世界経済秩序が交差するテーマとして、ドイツ植民地政策のなかでの植民地間労働力移動に関する史料を収集・分析することであった。具体的には、ドイツ外務省政治文書館に所蔵されている北京在住中国公使館史料のなかの「ドイツ植民地および保護領へのクーリー貿易、クーリー移民」と題された一群の史料を収集することであった。
2017年8月27日から9月3日にかけて、当該文書館を訪問し、史料収集・分析を行った。その際、上記の史料群に加えて、ドイツ植民地だけではなく、オランダ領インドあるいは東南アジアの英領植民地向けの中国人契約労働者の移送に関する史料についても体系的に調査することができた。ベルリン・リヒターフェルデ連邦文書館にも、外務省に関連する史料が存在するが、以前にマイクロフィルムでの史料収集を済ませていたことと、調査期間との関連から追加調査は行わなかった。
当初の予定では、史料紹介を学会誌に寄稿する予定であったが、第一次世界大戦を植民地戦争の観点から検討する研究動向論文の発表と重なったため、後者を優先させた。また、植民地責任論に関する研究動向紹介コラムも執筆し、来年度公表される予定である。いずれも本研究プロジェクトに関わる作業である。
また、現代の視点から、本研究について検証する作業を担う研究協力者星野桃子氏(千葉大学大学院博士課程)に、予定通り、2017年9月15日~24日、ベルリン・リヒターフェルデ連邦文書館で史料調査を行ってもらった。
近年のグローバル史の活況は、ドイツ近代史にも及んでおり、そのような視点を含んだドイツ植民地主義に関わる新たな文献も刊行されてきた。これらの文献収集も着実に進めている。

Strategy for Future Research Activity

来年度には、植民地貿易論に焦点をあてて分析を行う。これまでドイツ本国の対外貿易に占めるドイツ植民地輸出入貿易の割合の乏しさから、ドイツ本国にとっての「植民地産品」の重要性が過小評価されていた。しかし、同時代の植民地政策担当者は、ドイツ植民地の対外貿易政策を、ドイツのみならず、他の列強の植民地経済との関係のなかで議論していた。したがって、ドイツ本国の対外貿易と植民地主義との関係は、ドイツ本国と自国植民地の関係だけではなく、植民地支配を前提とした世界経済全体から考察する必要がある。
本プロジェクトでは、世界経済論における商品連鎖の視点を踏まえつつ、ドイツ本国にとっての「植民地産品」(例えば綿花、ゴム、植物性油脂など)のもつ意義を再検討する。同時代のドイツ植民地政策担当者が語る「植民地産品」は、ドイツ植民地からの輸入品に限らず、熱帯地域で生産されるべき商品を指す概念であった。政策担当者にとって、ドイツ本国の一次産品の需要をドイツ植民地だけでは満たせず、他の列強の植民地からの輸入が不可欠なことは自明であり、それを前提にドイツ本国とドイツ植民地間の関税政策は規定されていた。したがって、ドイツ植民地貿易政策論は、他の列強の植民地との貿易関係を前提に議論されなければならなかったのである。この点を念頭に置きつつ、政策担当者が作成した文書や貿易統計を分析し、ドイツ本国にとってのドイツ植民地貿易論を再検討する。
具体的には、ベルリン・リヒターフェルデ連邦文書館に所蔵されている「植民地経済委員会」(R 8024)の議論を分析する。本年度中に、昨年度に収集した史料を基に、植民地労働論に関する研究成果について学会・研究会での発表を目指す。また、この成果を基に学術雑誌への寄稿に取り組む。

Causes of Carryover

(理由)学務の関係から当初に予定した在外調査期間を短縮せざるを得なかったこと、またそのためにドイツ外務省政治文書館での史料調査に限定されたことが理由として挙げられる。また、ドイツ外務省政治文書館は、デジタルカメラでの史料撮影が認められており、史料複写代が不要になったため、その分も当初の予定より使用額が少なくなった理由である。
(使用計画)学務の関係から在外調査期間を短縮したことで、ドイツ・リヒターフェルデ連邦文書館での調査を割愛したが、次年度以降は同文書館での調査を予定している。次年度以降の同文書館での調査に、本年度のフォローアップ調査期間を加えて、本研究プロジェクトの研究成果を十全なものにする予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2017

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] 開戦100周年における第一次世界大戦研究を振り返る――植民地戦争・世界戦争・『帝国の戦争』の視点から2017

    • Author(s)
      浅田 進史
    • Journal Title

      歴史と経済

      Volume: 236号 Pages: 34~42

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2018-12-17  

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