2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03862
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
坂根 嘉弘 広島修道大学, 商学部, 教授 (00183046)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 農業技術普及 / 不正肥料 / 肥料取締法 / 肥料検査官 / 朝鮮総督府 / 朝鮮農地令 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近代日本(途上期)における農業技術普及を実証的に分析するところにある。その際、①実践的問題関心による新たな分析視角を意識的に導入すること、②近代日本における農業技術普及分析の実証密度を高めること、③同時代の台湾と朝鮮の分析を同様の問題関心・手法で進め地域比較をすること、が本研究の特徴である。 本年度は、②については、不正肥料についての調査を進め、③については、吉田正廣という朝鮮総督府官吏について調査を進めた。 不正肥料の横行は肥料の普及を阻害することになる。それをいかに抑えるかが、肥料普及における途上期日本の課題であった。論文「不正肥料と市場」をまとめつつある。そこでは、明治期の不正肥料問題、肥料検査官の配置、大阪における肥料取締法の実績、府県農事試験場による依頼分析の実績を検討しつつある。 朝鮮総督府官吏・吉田正廣は、朝鮮小作慣行調査を実施し、朝鮮農地令の制定を実務面で支えた人物である。地主小作関係の有り様は、農業技術普及を大きく左右する。たとえば、朝鮮のように、残余制御権・残余請求権が弱いと、肥料投入を抑制する傾向が強くなる。この研究は、朝鮮に於ける地主小作関係を日本との比較で分析しつつ、それとの関連で吉田正廣の経歴と業績をまとめるのが課題である。本年度は、まず論文「朝鮮総督府官吏・吉田正廣の経歴と業績(上)(下)」をまとめた。 その他、②については、明治中期の農業技術普及についてのデータを蓄積しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明治期の日本における農業技術普及についての資料収集が遅れているが、全体としては概ね順調に進んでいる。 論稿は、論文「不正肥料と市場」と論文「朝鮮総督府官吏・吉田正廣の経歴と業績(上)(下)」をまとめた。論文「朝鮮総督府官吏・吉田正廣の経歴と業績(上)」は広島修道大学紀要『経済科学研究』第21巻第1・2号(2018年2月)に掲載した。論文「朝鮮総督府官吏・吉田正廣の経歴と業績(下)」は次号に掲載予定である。論文「不正肥料と市場」はまだ詰めの作業が残っており、それを終えて、近く公表する。 また、本研究と深くかかわる論稿として、『岩波講座日本経済の歴史3近代1』、『岩波講座日本経済の歴史4近代2』、『岩波講座日本経済の歴史5現代1』において「農業・土地用益」部門の論稿を掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、以下に注力する。 ①実践的問題関心による新たな分析視角をブラッシュアップするために、開発経済学グループの研究会に参加する。現在二つのプロジェクトが進行している。 ②明治期の農業技術普及についての資料収集に力を入れる。明治期の農業雑誌についての資料収集は進んでいる。行政文書の資料収集に注力する。 ③日本、台湾、朝鮮の地主制についての比較分析を進める。
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Causes of Carryover |
朝鮮総督府関連の調査を優先し、道府県庁行政文書の調査が遅れたために、次年度使用額が生じた。2018年度は、道府県行政文書などの調査に旅費として使用し、資料収集調査を精力的に実行する。
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