2019 Fiscal Year Research-status Report
Exploratory research about the factors in autonomous formation of wide-area innovation network from the follower's standpoint
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17K03871
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小浦方 格 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30401772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 敦久 新潟大学, 地域創生推進機構, 教授 (10744279)
平松 庸一 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (90432088) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イノベーション / 産業クラスター / ネットワーク / リーダーシップ / フォロワーシップ / 人材育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において「地方における先端産業クラスター形成の努力が当該地方の産業発展に繋がるか」という視点で、クラスター構築に至る地域内で合意形成過程と地域に与える影響について調査を行ってきた。これまでのヒアリングや文献調査からにより明らかになりつつあることは、「航空機産業=先端産業」という固定的観念が自治体やクラスター経営をして思考停止に陥らせている可能性である。 しばしば、今後数年にわたり航空機産業市場が数倍に拡大されると予測されること、そして同産業の「技術波及効果の大きさ」が言及される。前者を述べる場合、その変化がプラスに大きい点が強調される一方、産業規模の絶対値が例えば自動車産業に比較して5%に満たないことが看過される傾向が強い。また後者については、航空機産業全体が一様に「高度な」技術を要し、早期の参入による利益が中小製造業であっても享受可能であるような論調も見られるものの、まさに航空機部品は数百万点にも上り、要求される技術レベルは千差万別である。さらに言えば、先端技術開発の成果が航空機に搭載されるまでには長い年月を要し、技術波及効果によってその利益を享受するには川上企業と共に、長期かつ莫大な先行投資に耐えなくてはならない。その一方、矛盾するようだが新規参入者にこそ実績が望まれるため、川上企業からのコスト低減、安定供給、品質確保に対する強力な圧力に長期間耐えなくてはならない。 これらの障害を乗り越えて先端産業クラスターを形成する意義はある。しかしながら、研究者が調査した限りにおいて多くのリスクを理解し、技術研究開発から市場参入までの長期にわたって公的資源を投入するだけの合意が十分になされているとは言い難い。今後、複数地域間における産業クラスター形成に至る合意形成プロセスを比較し、発展的地域経営の要諦をさらに明確化したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
概ね研究目標を達成しつつあるが、地域間比較のためのキーパーソン抽出が困難であること、また航空機産業は防衛産業との繋がりが深いこと、世界的に完成機メーカーは寡占状態にあること、その川下である国内メーカにおいては守秘義務の壁が厚く、調査研究は容易ではないことから、当初予定していた研究対象へのアプローチが困難となっている。そのため、やや方針を変更し、比較的周縁の関係者、関係組織に対して異なる方法による調査を試みており、今年度は研究期間の延長を申請したものである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り研究期間を延長したが、特に2020年度以降、COVID-19の影響により国内移動の制限を受けており、意図していた調査が困難となっている。しかし一方、近年発生した米国大手航空機メーカによる新鋭機運航停止トラブルや、国内で開発が進められている旅客機の納入遅延の発生などから、航空機産業に関する慎重な研究発表が散見されるようにも見える。こうした研究者や経済人を新たに研究対象とし、文献調査をさらに進めることで航空機産業クラスターの形成による地域経済への影響の精査、そしてその結果を一般化することにより、地域産業が基礎自治体を超えてネットワーク化し、相互に強調と競争を通じて広域に発展しうるポイントを抽出したい。
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Causes of Carryover |
主に想定していた訪問ヒアリング調査の計画が困難であったことに起因し、旅費の支出が計画よりも遅れ、低額となった。次年度にはヒアリング調査を1~2件予定していることと、研究成果としての論文投稿を予定していることから、これらの費用に充当する予定である。
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