2017 Fiscal Year Research-status Report
欧州自動車多国籍企業の生産ネットワーク戦略の基本構造と進化に関する実証的研究
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17K03915
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
細矢 浩志 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (10229198)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 欧州自動車産業 / 生産ネットワーク / 国際分業 / 国際経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本研究の主な取り組みは,欧州自動車多国籍企業のEU周辺国(スペイン=EU東方拡大前の周辺国,チェコ=2004年第一次EU東方拡大後の周辺国,ルーマニア=2007年第二次東方拡大後の周辺国)における子会社経営の「多様な」実態について,生産ネットワーク戦略の「進化」という観点から実証的に分析・比較検討することにある。 2.平成29年度は,①研究対象=欧州自動車産業・企業にかんする地域・企業間国際分業の構造と動態の解析,②ベルギー・チェコの現地調査と同国をはじめとする中東欧諸国(新周辺国)の構造・動態分析に取り組んだ。①については,文献・統計史資料等をつうじてEUと周辺諸国の経済・産業事情ならびに欧州自動車産業と国際分業の展開動向にかんする内外の先行研究を調査・サーベイし,基礎的な事実関係の整理と統計データ解析を進めた。②については,在EU日系自動車企業の現地工場を訪問し,ヒヤリング調査と工場見学をつうじて欧州自動車産業の活動状況や同地域における自動車産業の国際分業の展開動向にかんする最新情報の吸収を行った。 3.上記の調査・研究をつうじて,中東欧地域の自動車産業における直近の展開動向としてR&D活動の興隆など産業の「高度化」が進展しつつあることを確認した。とくにチェコでその進展著しく広域欧州の国際分業体制における新しい役割を示すものとして注目できるが,その活動は「現場支援型」の補助的な性格にとどまること等を把握した。R&D事業の分析は,多国籍企業現地子会社の事業特性を比較し自動車産業の国際的なネットワーク型生産・分業モデルの基本構造とその発展の方向性を探るうえで有効であるとの知見を得た。 4.研究成果の一部は,論文ならびに学会発表として取りまとめ公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.EU経済・産業事情をはじめとする自動車産業の動向や周辺諸国の貿易・投資動向,地域・企業間国際分業にかんする構造・動態分析について,国内外調査をつうじて実証的な先行研究と統計を比較的順調に渉猟・捕捉することができたため,その到達点と課題を整理・把握し研究の前進を図ることができた。 2.チェコをはじめとする中東欧地域(新周辺国)の自動車R&D事業の展開を軸とする産業「高度化」の進展にかんする実証研究を取りまとめ,学会発表・論文公表をつうじて研究成果を社会へ発信・還元した。 3.平成29年度に予定していたスペイン(旧周辺国)現地調査については,受入れ等で訪問先との日程調整がつかず年度内実施を見送り,これまでの研究で培った環境を活用し人的・組織的支援基盤が整っていたチェコ(新周辺国)・ベルギー(中心国)への調査・研究活動を先行して実施した。それにともない,自動車多国籍企業の中東欧(新周辺国)拠点における企業経営にかんする研究の遂行を優先した。スペイン調査に係わる取組みは予備交渉と位置づけ,次年度以降の実施に向けて準備態勢を整える機会となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.今後も原則として,本研究調書で示した方法と計画に則り,研究を遂行する予定である。 2.平成30年度は,前年度研究の進捗状況を踏まえつつ,引き続きEU経済事情と欧州自動車産業動向ならびに国際分業にかんする解析に取り組むと同時に,スペイン(旧周辺国)の構造・動態分析と現地調査を遂行する。調査手法は原則として前年度実施のチェコ・ベルギー調査に準拠したものとする。平成31年度は,研究計画で示したルーマニア(新・新周辺国=EU新周辺国としてチェコと共通するがチェコに遅れてEUに加盟したという意味で「新・新周辺国」と捉える)の構造・動態分析と現地調査を遂行する予定である。現地調査と統計・文献解析にもとづく実証的検討との間で相互検証を実施しながら,考察の現実的妥当性を高めつつ研究の前進を図る。 3.チェコに見るようにR&D事業の発展を軸とした産業の「高度化」が進展している事情に注目し,EU周辺国においてR&D活動や産業「高度化」が顕著となった理由や背景,多国籍企業による子会社R&Dの推進要因等を説明する理論モデルの検討に着手する。それらを踏まえ,国際分業やネットワーク型生産にかんする理論モデルについての内外の先行研究を概括しネットワーク概念を組み込んだ理論的仮説の構築に取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は,当初予定していた調査史資料の整理・データ入力作業要員の雇用を節約できたことによる。次年度に繰り越し予定の助成金は,平成30年度に実施予定の海外現地調査用の経費(外国旅費)として使用する。平成30年度の研究費総額は,実施計画書に記載した当該年度の研究経費と繰り越し予定金との合計額を予定する。
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Research Products
(2 results)