2017 Fiscal Year Research-status Report
医療の「民主化」に向けた組織・集団間関係の再構築:管理医療機器のケース
Project/Area Number |
17K03924
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
河野 英子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (40352736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高石 光一 亜細亜大学, 経営学部, 教授 (00350710)
竹内 竜介 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (30607940)
大沼 雅也 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (30609946)
福嶋 路 東北大学, 経済学研究科, 教授 (70292191)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 医療機器 / 普及 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療費削減という政策課題と技術革新を背景に、医療の規制緩和が進展する中で、医療機器の使用資格の一般ユーザーへの緩和と機器の普及=医療の「民主化」が進む傾向がある。本研究では、使用リスクが高く規制が強い「管理医療機器」のなかで、民主化を実現した希少な事例をもとに、そのプロセスを分析する。今年度はAEDを取り上げ、以下の分析を行った。 第一に、AEDの民主化プロセスの分析である。AEDは、規制緩和により使用資格が拡大され、機器が急速に普及してきたが、その障壁は相対的に高かったと想定される。それらの障壁をどのように克服してきたのか、規制緩和に貢献したとされる複数の医師および航空会社を対象に、文献調査およびインタビュー調査を行った。その結果、AEDの必要性を強く認識した複数の医師による多様な主体への働きかけ、および航空会社におけるAED採用が規制緩和と普及の導管となったプロセスについて、一定の知見を得ることができた。その成果の一部を、ワーキングペーパーとしてまとめた。 第二に、AEDの製品開発、普及・啓蒙活動に関する分析である。上記の民主化プロセスのもと、ターゲットユーザーが医療従事者から非医療従事者(一般ユーザー)へと変質するなかで、メーカーが開発・販売活動をどのように変化させたのかについて分析を行った。具体的には、日本のAEDメーカーを対象として、文献調査およびインタビュー調査を行った。その結果、警備会社・自販機ベンダーなどの新しい販路の開拓、一般ユーザーの適切な使用を可能にするシステムを搭載した新製品の開発、普及・啓蒙のための社内および社外での積極的な研修活動、およびそれらの土台となる当該メーカーの企業理念等が明らかになった。その成果の一部を、ワーキングペーパーにまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワーキングペーパーとして複数の成果をまとめてきており、そのなかから学術雑誌への投稿準備を進めていること、また、調査対象である複数の機関・企業・個人と今後の研究の深化につながる関係を構築してきており、複数の研究成果につながる可能性が高い調査分析が進んできていることから、おおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、ワーキングペーパーとしてまとめた成果の一部を改稿したうえで、学術雑誌への投稿を行う。 第二に、平成29年度に得られた知見のなかで、規制緩和に対する医師および航空会社の役割、機器の普及における警備会社の役割について、さらなる文献調査、インタビュー調査を行い、新たな成果としてまとめていく。 第三に、AEDの民主化が波及したアジアでの現地調査を行う。医療の民主化の世界的な連鎖を視野に入れながら、分析を深める。AEDの民主化はアジアに連鎖しており、なかでも台湾での動きが注目される。医療法の改正に伴いAEDが急速に普及し、日本のAEDメーカーが主要なプレーヤーになるなど、注目すべき動向がある。日本と同様に医療の民主化という意味では後進国にあたる台湾と、米国・日本のAED普及プロセスの比較を行うことで、分析を深めていく。
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Causes of Carryover |
国内での文献調査およびインタビュー調査を中心に行い、そこから第一段階の成果をまとめること、次段階の分析のための知見を得ることに注力したため、当初予定していた海外現地調査計画を次年度に変更したため。 次年度使用額は、海外現地調査の出張旅費および関連の文献購入費として使用する計画である。
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Research Products
(3 results)