2017 Fiscal Year Research-status Report
障害者雇用における企業の「合理的配慮」の方法と費用に関する研究
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17K03963
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
眞保 智子 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (10341794)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 障害者雇用 / 合理的配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、障害者雇用促進法2013(平成25)年改正法により規定された、“合理的配慮”提供の「方法」と“過重な負担”でない限りとされている「負担の程度」の実態について、企業への調査により明らかにすることを目的とする。本研究の(1)障害者が必要な合理的配慮を申し出ることで、提供されることになっている採用前の合理的配慮提供は、職場や職務の実際の情報が乏しい状況では、障害者から網羅的に申し出が行われる傾向にあること、(2)インターンシップを行い職場と職務の実際の情報がある場合は、実際の職務遂行を念頭に効果的な合理的配慮提供の調整がなされること、(3)インターンシップを行い、障害者、支援者、企業の3者で合理的配慮提供の調整がなされた場合は、就職後の定着がよいこと、である。仮説に基づき障害種別ごとの“合理的配慮”提供の「方法」について検討するために、鉄道事業、製造業、情報通信業、印刷業、人材派遣業、金融業、小売業の企業9社、就労支援機関3事業所、精神科クリニック1施設に調査を行った。調査により、上記仮説(2)、(3)のような過程を経て採用された障害のある従業員が職場でどのような合理的配慮を提供されているのかその一端が明らかになった。第一に個別的な雇用管理がなされていた。具体的には、労働時間や休憩時間、通院のための休暇の扱い、仕事の配置等についての障害のある労働者ごとに個別のきめ細やかな管理がなされていた。第二に、相談体制の構築である。平成25(2013)年改正法第36条の4の2で定められている雇用管理上必要な措置を講じられる相談体制であるが、障害者雇用の実務と実際に障害のある従業員が従事している仕事に精通した人材を配置すること、障害のある従業員からの信頼を得るために国家資格を所持した専門職の配置もなされていた。事例調査で得られた知見をもとに今後アンケート調査の質問紙の検討に入る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年(平成26)年から、法の施行までに必要な地域での障害者雇用の方法を議論する中で、企業の人事担当者、支援機関の就業支援員、弁護士と研究者をメンバーとする「地域における差別禁止・合理的配慮提供プロセスに関する研究会」を立ち上げ、実際の雇用の場で、改正法の趣旨に合致した合理的配慮提供を検討しながら個別企業の障害者雇用の事例を蓄積し、分析した結果をもとに合理的配慮提供プロセスの構築と企業が合理的配慮提供を適切に円滑に行うためのツールの開発を行ってきた。研究計画では、29年度から30年度の前半にこのツールを用いて企業での雇用事例調査を行い、障害種別ごとの合理的配慮提供の具体的な方法を明らかにすることとしており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度初頭に特例子会社(422社)と大企業だけでなく中小企業も会員となっている社団法人全国重度障害者雇用事業所協会(以下全重協324社)を対象にアンケート調査の実施を予定している。これに備え、平成30年度は、雇用事例調査の結果を踏まえ、質問票の検討を行う。
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Causes of Carryover |
平成31年度に予定しているアンケート調査に備えて統計ソフトの更新を考えていたが、専用パソコンで処理を行うことが適切であることから、両方を平成29年度に準備するのは、最新版を使用したい趣旨からすると適切な時期ではないと考え、次年度以降に整備することとした。
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