2017 Fiscal Year Research-status Report
医療・健康関連サービス財の遵守・継続消費行動の影響要因に関する実証的研究
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17K03994
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Research Institution | Hokkaido Pharmaceutical University School of Pharmacy |
Principal Investigator |
櫻井 秀彦 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (70326560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森藤 ちひろ 流通科学大学, 人間社会学部, 准教授 (10529580)
岸本 桂子 北海道薬科大学, 薬学部, 准教授 (50458866)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遵守行動 / 継続意志 / 意図的/非意図的中断 / 慢性疾患患者 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は医療・健康関連サービスの遵守・継続消費行動ならびに中断・中止行動の影響要因の調査・モデル分析を行った。特に、近時海外の先行研究で着目されている、意図的中断と非意図的中断に着目して服薬アドヒアランスへの影響構造について検討した。継続的な服薬が必要な慢性疾患患者を対象としたWeb調査を行った。まず、意図的中断と非意図的中断の因果の方向性とアドヒアランスの影響について検証した。次に、先行研究を基にした、情報探索、患者参画、自己効力感、効果認識等がどのように意図的または非意図的な中断やアドヒアランスに影響するかを検証した。結果として、非意図的中断が意図的中断に影響すること、アドヒアランスには非意図的中断の影響が最も強いことが示された。また、自己効力感、情報探索、効果認識などはすべて間接的影響であり、アドヒアランスへは直接影響しないことも示された。非意図的中断には自己効力感、効果認識が順に正の影響を示した。性別や年齢の影響は有意でなかった。更に、情報探索は意図的/非意図的中断の両者に負の影響を示したが、特に意図的中断により強く影響した。罹患期間に関しては、極僅かではあるが負の影響を示した。以上から、継続的服薬を促すためには、消費者の自己効力感に働きかけることの重要性、また特に情報過剰の場合は負の影響に留意すべきことが示された。更に、最終的な目的である服薬アドヒアランスを高めるためには、主な影響要因が患者にとって非意図的ないし無意識な中断であるが故に、その対策については医療者と患者が協同して検討すべきことが重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、量的調査と質的調査を実施でき、量的調査に関してはインターネット調査を完了させ、分析結果を査読付論文として投稿、受理させることができた。事前スクリーニング条件は「慢性疾患(高血圧や糖尿病など)と診断され、定期的に治療薬を処方されている」、「3か月以内に医療機関(病院・クリニック)を受診し、処方された慢性疾患の治療薬を薬局で入手している」、「40歳以上である」、「医療職(医師、看護師、薬剤師等)ではない」とした。最終的に、3か月以内に医療機関から慢性疾患治療薬を処方され、40歳以上、かつ非医療職の患者1,952名からデータを収集することができた。 質的調査は服薬と運動の継続行動に焦点を絞り、5人×6グループの計30人を対象とする、フォーカス・グループ・インタビューを実施できた。A)高血圧症のため薬を服用している患者で運動を定期的にできているA1グループ、出来てないA2グループ、B)高血圧の薬の服用はないが、血圧が高めで医師から運動療法の指示が出ている人で運動を定期的にできているB1グループ、出来てないB2グループ、C)持病がなく、運動療法の指示も出ていないがジム会員や体育館での健康・スポーツ教室に申し込んでいる人(健康維持・増進のために会費等を支払って運動する機会を得ようとしている人)で運動を定期的にできているC1グループ、出来てないC2グループで実施できた。 現在、逐語録を基にコーディングを行い、分析中であるが、服薬継続行動においても運動などの生活習慣の関連が示唆されるなど興味深い知見が確認されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の2つの調査を進める予定である。 ①インタビュー調査と質問項目の策定:初年度の分析で有意な影響要因の中から、自己効力感や情報探索、効果認識などいくつか絞込み、具体的な規定因に関する、顧客(患者)と提供者(医療職)へのインタビュー調査を行い、双方にとって行動に結び付きやすい設問項目を検討する。両者へのインタビュー調査も、心理的バイアスを回避するために、機縁法でなく、首都圏等のリサーチ会社に委託して調査を実施する予定である。このインタビューもテキストデータ化し、影響要因の規定因に関する定性的分析データとして質的研究を進める予定である。 ②Web調査:初年度の成果と、インタビュー調査で導出された仮説を基に、具体的な規定因と、更に影響要因との関連性についての調査・分析を行う。影響要因では、特に個人に起因する要因概念は抽象的なものになりがちであることから、その前駆変数としての有意な規定因を明らかにしなければ、行動強化・変容を促すことは困難である。そこで、具体的な施策立案が行えるよう、それまでに明らかにした有意な影響要因に関して、上記①のインタビューから想定された規定因を統計モデルで検討する。目標標本数は、多母集団同時分析も可能なように2000人規模で進める予定である。 また、初年度のインタビュー調査のデータについても分析を進め、質的研究論文または量的研究の結果と併せて混合研究法による論文として完成させ、学術誌に投稿することを目標としたい。
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Causes of Carryover |
初年度のインタビュー調査と量的調査の2つを実施するには直接経費では不足したことから、量的調査は所属先支給の個人研究費にて賄ったために、残額が生じた。 次年度もインタビュー調査と量的調査の2つを実施する計画であることから、繰越分は調査費用として支出される予定である。
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Research Products
(4 results)