2017 Fiscal Year Research-status Report
英東インド会社の没落とジャーディンマテソン商会勃興の会計史と財務分析からの研究
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17K04075
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山口 不二夫 明治大学, グローバル・ビジネス研究科, 専任教授 (90245340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 由二 大東文化大学, 環境創造学部, 教授 (40281597)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イギリス東インド会社 / ジャーディンマテソン商会 / カントリートレーダー / 庶民院議事録 / パートナーシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象は英国東インド会社とJardine Matheson商会の19世紀前半の会計帳簿でその帳簿やアーカイブを用いて当時の経営を明らかにすることが研究目的である。東インド会社の資料はロンドンの大英図書館にあり、Jardine Matheson商会の資料は英国のケンブリッジ大学の図書館に所蔵されている。2017年8月から9月にかけて同地を訪問し、史料を閲覧し、検討し、撮影することが出来た。またスターリング大学やケンブリッジ大学の研究者とも議論することが出来た。 ケンブリッジ大学の史料を元に1799年から1801年のJardine Matheson商会の前身商会の帳簿の検討を行った。18世紀から19世紀にかけて東アジアの海岸ではカントリートレーダーがパートナーシップ形態で、東インド会社の貿易の補完をしていたが、その活動と帳簿の内容を明らかにすることが出来た。その成果は2017年11月の日本会計史学会の全国大会で報告した後、学会誌に投稿し掲載予定である。 英国東インド会社については、重厚な研究の蓄積があることから、国内研究者と議論を行い、研究の出発点としてまだ誰も用いていない、英国庶民院議事録に掲載された1801年から14年の財務データの分析を行った。2017年9月に旭川大学における日本会計理論学会全国大会で報告を行い、その内容を同学会誌に投稿した。受理され現在印刷中である。 庶民院議事録の東インド会社史料は原帳簿から作成されているが、その決算期が異なり決算データは一致しないが、経営状況は把握可能である。この時期はナポレオン戦争時であり不安定な期間であっあが、安定的に配当を行っていた。営業収入営業利益率は13年間で平均7.97%、金利・配当の支払いは7.29%で事業利益からの自己蓄積はできなかった。借入・社債に依存して企業の成長投資を行ったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究はJardine Matheson商会とイギリス東インド会社の①予備研究と資料収集 ②史料の印刷・整理、表データベースとしての入力 ③研究発表と研究者間のディスカッション ④成果物の公表に分けることができる。実際に研究を始めてみて、両社とも時期を区切って行うことが有効と考え、Jardine Matheson史料については1799年から1801年、東インド会社の国会の議事録資料は1814年まで①②③④を達成した。その点で順調で計画以上である。 具体的には、限られた時期についてJardine Matheson商会の前身のReid, Beale, Hamilton and Shank商会について当時の帳簿組織、事業の概要、利益の算出方法、パートナー間の利益の分配方法をほぼ明らかにすることができた。同上商会は東アジアの貿易において東インド会社を補完する企業でパートナーシップ合名会社形式をとっておりCountry Traderとよばれていた。株式会社といっても勅許会社で独占会社であった東インド会社を1800年ごろまでは、各自の群小資本でパートナーシップ形態のCountry Traderたちは補完する立場であったが、東インド会社が18世紀後半から独占貿易権を失う中で、Country Trader達が凌駕し、とってかわるというダイナミズムが19世紀の30年代にみられることになる。 このダイナミズムを明確にするためにCountry Traderの状況を帳簿の内実を明らかにすることと、東インド会社の業績と問題点を経営分析の方法で明らかにすることを試みた。当初の予定と若干異なるのは、1832年のJardine Matheson商会の設立まで多くの史料があり、全部を検討しきれない可能性がある点である。
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Strategy for Future Research Activity |
この一年の研究方法で、成果が出ているので、基本的にはその方法を踏襲したい。 Jardine Matheson史料については1799年から1801年までしか検討がおこなわれていないので、そのあとの時期についてこれまでの方法を踏襲して行うことが必要である。ただし、1832年のJardine Matheson商会の設立までさらに5人のパートナーの変化がある。その際帳簿様式も変わる場合があり、1802年から1832年の間の多くの史料の検討にとりかかる必要があるので、年次に従って順次実施したい。 イギリス東インド会社については1815年から22年の庶民院議事録の史料の検討が急務である。さらにこの庶民院の史料データが原帳簿のどこを用いて作成されたか、比較検討する必要がある。さいわい両史料とも英国では閲覧可能なので、訪れて閲覧して史料の検討を行い、現地で見切れないものは撮影して日本で検討を行う。 2017年度未使用分の研究費については、これまでJardine Matheson商会史料については1799年から1801年のデータにとどまっていたが、今後その後の時期も集積することからそのデータの解析を行うことができるので、今年度に使用する予定である。東インド会社史料についても、これまでのの史料に加えて1822年までのデータが加わりデータ分析に取り掛かることができるので、その分の費用として今年度に使用したい。
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Causes of Carryover |
共同研究者である山口由二(大東文化大学)が使用予定の分である。本研究では多くの財務データを比較検討するためにデータベースを作成する必要がある。同氏はそのデータベース作成して統計分析をする分担である。昨年度は初年度でありデータの読解に時間がかかり、かろうじて整理を行った状況であった。同氏の手元に届くのが遅く統計分析の時間がなかった。今年度はすでに一部のデータは届いており、さらに文献を解読してデータをどどける予定であり、統計分析とデータ解析作業にとりかかることが可能となる。そのため2017年度未使用分は今年度に使用予定である。
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Research Products
(2 results)