2017 Fiscal Year Research-status Report
北海道における精神保健ソーシャルワークの歴史記録と教育コンテンツの構築
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17K04230
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
永井 順子 北星学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (00386559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 園美 北海道医療大学, 看護福祉学部, 准教授 (10387417)
橋本 菊次郎 北翔大学, 教育文化学部, 准教授 (30433460)
福冨 律 東京家政大学, 人文学部, 講師 (60468840)
松浦 智和 名寄市立大学, 保健福祉学部, 講師 (90530113)
今西 良輔 札幌大谷大学短期大学部, その他部局等, 講師 (60746478)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 北海道 / 精神保健ソーシャルワーク / 精神科病院史 / 社会復帰活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、北海道内を6区域(下記の①~⑥)にわけて各区域の特色をふまえた精神保健ソーシャルワーク(以下、PSW)の歴史記述を行うことを研究方法とし、特に2017年度は現地における資料・史料の収集と整理、年表作成に努めた。 ①道南では、函館市立病院、函館市保健所と二つの私立精神科病院のPSWに関わる資料・史料、函館渡辺病院の初期ワーカーへのインタビュー等に基づき年表を作成した。②道央については、北海道立精神保健福祉センターにおけるPSWの歩みを整理することに着手した。また、後志、苫小牧、登別・室蘭の主だった精神科病院に充実した記念誌があり、それらに基づき年表を作成、さらなる情報収集のためのインタビュー対象者の調整を進めた。③道北では、名寄、稚内のPSWについて、現地での関係者への聞き取り調査を実施、希少な情報も含め収集できた。旭川については、旭川精神衛生協会誌『旭川精神衛生』のバックナンバーと旭川で最も古い共同作業所における聞き取り調査に基づき年表を作成、さらなる調査課題も見えてきている。④オホーツクについては、紋別の文献調査は進んだが、北見、網走の文献等が乏しく、2018年度に丁寧な現地調査を行う必要がある。⑤十勝については先駆的ワーカー・門屋充郎氏へのインタビューや文献等をもとに年表を作成、これを多面的に検証する意味で関係機関の資料・史料収集を実施した。⑥釧路・根室でも、開拓的ワーカー・佐々木寛氏へのインタビュー、関係機関の資料・史料収集を行い、年表を作成したが、根室についてはPSWの所在が見えてこなかった。 以上のように各区域のPSWの歴史の概況を把握し、年表や資料の一覧を整理するなかで、北海道における初期のPSWが精神科病院内の活動にとどまらず、共同住居や共同作業所の立ち上げなどの社会復帰活動を含んでいたことがどの地域にも共通して言えることが明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に予定していた、6 区域の精神科医療機関と保健所等行政機関の史料・資料収集と整理に加え、各地の社会復帰活動を明らかにする資料も収集できた。その結果、各地の年表、史料一覧の作成も行うことができている。また、1960~90年代の精神保健ソーシャルワーク先駆者の所在の調査、インタビュー対象者の選定について、研究代表者と研究分担者とで情報共有、役割分担しつつ着実に進めている。文献等の乏しいオホーツク(北見、網走)を除き、順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は平成29年度中に収集・整理した史料・資料の分析を特に全国通史との比較の観点で行う。これをもとに、インタビュー・ガイドを作成し、地域固有の精神保健ソーシャルワークの歴史について先駆者に聞き取りを行うとともに、精神保健福祉士養成教育の教材となるよう、実践者の立場からのソーシャルワーク観や地域資源開拓の視点・手法、未来の活動に期待するものなどについても語っていただく。インタビューは全て北星学園大学全学危機管理委員会の研究倫理審査にて承認を得た上で、研究代表者と分担者とで実施する。なお、教育コンテンツの作成に資するよう、対象者の許可を得た範囲でインタビュー場面を録音・撮影する。インタビュー内容は歴史的証言として扱い、平成29年度に作成した年表にインタビュー内容も盛り込んで各地に固有の精神保健ソーシャルワークの歴史記録を作成する。各地の歴史記録は調査報告として順次学会発表や紀要等への投稿を行う。 平成31年度は地域ごとの歴史を比較分析し、北海道の精神保健ソーシャルワークの歴史の体系的・包括的記述を行うとともに、これに基づき、歴史教育授業コンテンツを作成、授業を試行し、受講者へのアンケート調査結果を反映してコンテンツを完成させる。 以上は研究代表者と分担者とで役割分担をしながら進めるが、調査方法、調査結果の分析、記録や授業コンテンツの作成などのため、年3回程度研究代表者、分担者全員で打ち合わせ会議を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していたより、現地における史料・資料収集が進展し、函館現地調査の回数が予定より1回少なかったこと、スケジュール調整の困難によりオホーツク現地調査を行うことができなかったことがあげられるため、次年度現地調査旅費に上乗せする。
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