2017 Fiscal Year Research-status Report
共生社会実現への生態学的視点による地域基盤ソーシャルワークの人材養成
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17K04247
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
神山 裕美 大正大学, 人間学部, 教授 (80339473)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生態学的視点 / 地域共生社会 / 包括的支援体制構築 / 地域ケアシステム / コミュニティソーシャルワーク / 生活モデル / スーパービジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度の研究は、生態学的視点と地域基盤ソーシャルワークの理論仮説の再検討の一部を行った。具体的には、ミクロレベルでは、コミュニティソーシャルワークのスーパービジョンの実際より、実践者への指導・助言事項のまとめを行い、実践者レベルのミクロ・メゾ・エクソ・マクロ視点の留意点を検証した。また、2地域約20事例のコミュニティソーシャルワークのスーパービジョンより、その研究成果をふまえて試行し、スーパーバイジーの反応や評価よりその妥当性と留意点を評価した。さらに、メゾ・エクソ・マクロレベルでは、地方自治体の地域包括ケアシステムを例に、その適用を試行し考察した。地域包括ケアシステムは、保健・医療系と福祉系があり(二木2015)、それらが別々に展開し、保健医療系地域包括ケアシステムは、高齢者介護保険制度の中で発展した。しかしながら福祉系地域包括ケアシステムが蓄積した、生活モデルや生態学的視点による、利用者や家族支援、住民や小地域支援、そして介護保険事業計画や地域福祉計画との結び付けは、その展開に地域差がある。地域包括ケアシステムの発展に向けて、福祉分野の蓄積を生かし、ミクロからマクロまでの循環を結びつけるコミュニティソーシャルワークの視点を提起した。その仮説検証のため、2地域の継続的調査、1地域の現地調査とワークショップを行った。 H29年12月には地域包括ケアシステム強化のため、社会福祉法の一部改正が出されH30年4月より施行された。その内容は「地域共生社会実現に向けた地域福祉の推進」として、①住民と関係機関連携による地域課題解決、②市区町村による包括的支援体制の構築、③市区町村と都道府県の地域福祉計画の策定努力義務、である。上記の実現には、本研究成果が貢献できる可能性があるので、今後も理論仮説の構築と検証の循環より研究を継続したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、生態学的視点と地域基盤ソーシャルワークの関連を、国内外の最新研究成果より文献研究や現地調査等を行う予定であったが、理論仮説を1年で検証し、再構築するのは無理があった。また、共生社会実現への法改正も進み、今後も社会的状況の変化が予想されるので、その状況をふまえ研究期間を通じて、理論研究と実証研究より理論仮説を構築するよう変更した。それらに伴い、研修方法や質的調査方法の文献研究も行った。 H29年度は、地域共生社会と地域包括ケアシステム、及び包括的支援体制の構築について、国内の政策や実践、及び社会的状況変化が大きく、国外の文献や現地調査等を実施することができなかった。しかしながら、地域福祉分野が1970年代より実践蓄積した成果が政策化された年でもあり、その動向を同時代的に把握できた面では、貴重な年であった。そして、地域共生社会への関心が高まる中で、国内文献のみならず、行政や医療保健福祉等の専門職連携の動向、及び住民活動・住宅・町づくり・産業振興・宗教活動・市民活動等、幅広い分野の地域へのかかわりに触れ、研究を進められたことは貴重な機会であった。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度も、生態学的視点と地域基盤ソーシャルワークの関連を理論仮説に基づき、検証と修正の循環を進めたい。地域福祉実践と地域福祉計画の関連は、現在関わる2地域を継続的に調査すると共に、モデル性のある地域福祉実践と地域福祉計画を持つ地方自治体の情報収集し、4-5か所選定し現地調査を実施したい。また、コミュニティソーシャルワークの人材養成プログラムや指導・助言方法を検証し改良するとともに、社会福祉分野だけでなく、多分野に役立つコミュニティソーシャルワークの知見や指導・助言方法について、質的調査分析方法やプログラム評価を含めて、文献調査を継続し、プログラムの計画・実施・評価を継続したい。 さらに、H30-31年度にかけて、国外の地域基盤ソーシャルワーク教育のプログラムや指導方法の文献や情報収集を行い、調整可能であれば調査を実施したい。国外調査において、国内外とも都合の良い時期は同一ではなく、国外調査先の都合に合わせると大学業務との調整が困難な時期もある。所属大学にも協力を得ながら計画的に国外調査を遂行したい。 H31-H32年度は、当初計画ではプログラムの作成と実施・評価であるが、理論仮説に基づく研修会等の実施・評価は、H29年度より実施した。プログラムの作成と実施・評価も、理論仮説の検証と同様に、研究期間を通じて実施したほうが効果的なので変更した。それらの成果をふまえ、市町村における、ミクロ・メゾ・エクソレベルの業務とその循環を創り出すために、どのような人材養成プログラムや支援方法が必要なのか、マクロレベル理念とのつながりや、ミクロ・メゾ・エクソを経たマクロレベルの、改善提案の可能性を含めて考察したい。 実践仮説の考察と実践での検証結果は、学会や論文等で随時報告する。社会情勢の変化が速い時期なので、その動向をふまえ研究計画や内容変更も柔軟に行っていきたい。
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Causes of Carryover |
H29年度に国外調査ができなかったので、必要な物品・旅費・謝金を支出できなかった。H30年度に国外調査を調整し実施したい。
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