2021 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャル・キャピタルと健康:機序の解明に向けた実証的研究
Project/Area Number |
17K04306
|
Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
村田 千代栄 東海学園大学, 健康栄養学部, 教授 (40402250)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹田 徳則 星城大学, リハビリテーション学部, 教授 (60363769)
斎藤 民 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 部長 (80323608)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ソーシャル・キャピタル / 一般高齢者 / 「快」感情 / ウェルビーイング尺度 / 認知機能 / 抑うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目は、文献レビューにより地域のソーシャル・キャピタル概念の整理を試みた。日本の既存調査(一般高齢者の10年追跡データ・職域データ)の分析で、高齢者では、個人要因を調整しても地域のソーシャル・キャピタルが認知症や要介護認定と関連していることがわかった一方、若年層では、地域よりも個人のソーシャル・キャピタルの関連が強く、年齢層による交互作用が確認された。結果は論文として発表した。2年目は、ソーシャル・キャピタルと健康をつなぐ機序を探るために、社会的交流を促進するパイロットプログラムを、地域で展開した。2ヵ月半のプログラムの実施後、参加者(地域住民64名)において、抑うつ(GDS-15項目)が減少し、主観的幸福感など「快」感情(日本語版PANAS)や近隣住民への「信頼感」や「助け合い規範」が向上していることがわかった。7自治体の「通いの場」155箇所の参加者2872名を対象にした分析でも、地域サロンへ参加することで個人の社会関係が促進され、その結果、地域全体のソーシャル・キャピタルが向上するという波及効果が示された。これらは、日本公衆衛生学会、米国公衆衛生学会にて発表した。3年目は、同一自治体の他の小学校区で、改良プログラムを実施した(参加者56名)ところ、プログラム前後で、主観的幸福感の向上、抑うつの減少、社会参加の促進に効果があることが示された。4年目は、コロナ禍により地域活動が制限されたため、プログラムの長期効果を見るため、1年後のフォローアップ調査として、参加者44名(追跡率78.6%)に、アンケート調査・認知機能検査・聞き取り調査を実施した。コロナ禍が長引いたため、データの取得に時間がかかったが、データクリーニング・聞き取りのコーディングを終え、分析に取りかかった。最終年度の5年目は、結果のまとめを行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウィルス感染症蔓延防止のため、ほとんどの地域サロンが閉鎖され、地域の高齢者に直接会っての調査が難しくなった。そのため、オンラインでの調査に切り替えたが、調査のための準備やデータ収集に予定より時間がかかり、データ分析にも遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
自治体が介護保険事業計画策定のために3年毎に行っている一般高齢者調査を用い、2地域で行ったプログラムの地域への波及効果を検討する予定であったが、コロナウィルスの蔓延により、地域の高齢者を対象にした研究活動の自粛が求められた。そのため、ソーシャル・キャピタルの醸成を目指したプログラムの効果について検討するにあたり、プログラムによる個人のソーシャル・キャピタルや精神的健康度に与える短期効果(プログラム前後)と長期効果(プログラム1年後)の3時点を検討し、プログラム直後に発生したコロナ禍の影響を加味しつつ、地域サロンにおけるプログラムが、個人のソーシャル・キャピタルにどう影響し、地域全体のソーシャル・キャピタルの醸成につながるかについ分析し、今後の地域づくりに資する知見を得、成果を地域に還元することを目指す。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により、当初の計画より一般高齢者を対象にした調査の実施が後にずれ込み、データのクリーニングや分析が遅れた。また、コロナウィルスによる出張の自粛などを受け、追加調査や研究成果発表のための経費が繰り越されることになった。
|
Research Products
(2 results)