2018 Fiscal Year Research-status Report
教員のいじめ対応効力感を高めるための支援プログラムの開発及び効果検証
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17K04341
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
飯田 順子 筑波大学, 人間系, 准教授 (90383463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 寛子 宮城学院女子大学, 学生相談・特別支援センター, 准教授 (30364425)
青山 郁子 静岡大学, 国際連携推進機構, 特任准教授 (60586808)
杉本 希映 目白大学, 人間学部, 准教授 (90508045)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | いじめ予防 / 教員研修 / 学校心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,教員のいじめ対応効力感を高めるプログラムの開発及び専門家グループによる現場受容感の検討(研究III),プログラム評価の指標の検討:質問紙調査(研究IV)を予定していた。 研究IIIについては,米国で行われている教員研修用プログラム『The Great Teacher Program』の翻訳及び日本のいじめに関する先行研究のレビュー結果から,研修内容の柱を定めてプログラム内容を検討した。そして,夏休みを利用し,教員を対象とした「いじめ予防・対応に関する研修」を実施し,効果を検討した。研修内容は①いじめに関する基礎知識,②いじめへの学校全体の対応,③いじめへの個別の対応(ピアメディエーション),④いじめへの学級・学校の対応(ポジティブな行動支援)とした。事前事後に実施したアンケートの結果から,今回の研修が教員のいじめに関する知識と対応に関する自信を高めていたことが示された。また,自由記述の内容からもこの研修プログラムの各要素について肯定的な意見が得られ,現職教員からの内容の受容感が確認された。この内容については,2019年度の日本教育心理学会にて発表予定である。 研究IVについても,研修プログラムの効果を測定する指標として,“いじめに関する基礎知識”を問う項目(独自作成)“と昨年度の調査で開発した“いじめ対応に対する自信”を測定する尺度を研修の効果を測定する指標として用いて,その利用可能性を検討した。その結果,今回の研修ですべての項目において事後の得点が事前の得点より有意に高くなり,研修内容と測定内容の整合性が確認された。また,教員のいじめ予防・対応への関与の影響として,学級の児童生徒への影響を測定する尺度として,ソーシャル・エモーショナル・ヘルス・サーベイの日本語版の作成も実施し,その成果を国際学会にて発表した。今後はこの尺度も,研究の中で用いていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展していると考える理由は,この研究の主眼となっている教員効力感を高めるプログラムの開発と予備的実践を今年度実施することができ,そしてそのプログラムによって,教員のいじめ対応の自信が高まるという成果が得られたためである。プログラムを実施するにあたり,①いじめに関する基礎知識の内容は独自作成したが,その他の部分に関しては現役の小学校教員や小学校・中学校の管理職経験者である専門家に依頼し,その部分の内容を検討いただいた。そのことにより,現場ですぐに用いることのできる内容となっていたと考える。研究計画の時点で予定していた海外視察は行くことができなかったが,その分を先行研究のレビューや日本の各分野の専門家と連携することで補い,プログラムの開発は概ね順調に進んでいる。次年度はWorld-Anti-Bullying Forumに参加し,世界各国のいじめ予防の現状を視察する予定である。これらの内容も,プログラムに反映し,よりプログラムを洗練させていきたい。 研究成果の発信状況については,研究IIIの「いじめ予防・対応に関する研修」については,前述の通り2019年度日本教育心理学会にて発表を予定している。また,研修内容の詳細について,論文化をめざす。また,これまでの研究チームによる成果を日本教育心理学会の自主シンポジウムにて発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ,今後は「教師効力感を高めるプログラムの実践」の課題を進めていく。当初は2年次終了時までにいじめ予防対応プログラムを完成させることを予定していたが,現時点でプログラムの内容が確定しているところまで至っていない。そこで,今後の研究の推進方策として,以下の3つの方針で効果的に進めていきたい。1つは,プログラム内容を確定し,専門家のレビューによってプログラムの妥当性を高めることである。2つ目は,確定したプログラムをいくつか実施可能な集団(教員養成課程の大学生,大学院生,小中学校における校内研修)で実施し,プログラムの効果を検証することである。3つ目は,研修後のサポートグループについて,多忙な学校現場で必須研修とすることは難しいことから,研修参加者の中から任意で参加者を募りフォローアップの会をもち,プログラム内容を再確認したり,実行が難しかった点を話し合う場を設けてサポートグループの意義や効果について検討したい。これらの方策によって,当初予定していた研究と同様の成果が出せるよう進めていきたい。
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Causes of Carryover |
計画していた海外視察に行くことができなかったため,今年度の使用額が予定を大幅に下回った。この点については,2019年度6月にダブリンで開催されるWorld Anti-bullying Forumに参加を予定しており,いじめ予防・対応プログラムに関する世界的な動向について調査する予定である。また,3年次は現場で使用しやすいプログラム教材の開発を予定しており,その部分で大きな支出が見込まれる。
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Research Products
(3 results)