2019 Fiscal Year Research-status Report
幼児における社会情動的スキルの発達過程-個人差要因を含めた媒介・調整効果の検討-
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17K04418
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
清水 寿代 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (90508326)
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Project Period (FY) |
2018-02-28 – 2021-03-31
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Keywords | 社会情動的スキル / 感情理解 / 抑制機能 / 幼児 / 媒介要因 / 調整要因 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会情動的スキルの育成に関するこれまでの研究では,どのような因果関係が社会情動的スキルの増減に影響を及ぼしているのかは明らかにされていない。つまり,幼児の適応を考える際,様々な介入変数間の詳細な因果関係の明確化,かつ予防的視点を含めた検討は喫緊の課題とも言える。令和元年度は、感情理解力,抑制機能及び社会情動的スキルを縦断的に追跡(4~6歳の3時点で測定)し,特に注目するのは,感情理解力と抑制機能の因果関係であった。 本年度の調査は保育所と認定こども園で実施し,4園の協力を得た。データの収集にあたっては,昨年度に作成した教師評定用社会情動的スキル尺度を使用した。子どもには,言語能力検査,感情理解課題,抑制機能課題を個別に実施した。調査は,8月,12月,3月の3時点で収集した。 今年度は,感情理解力と抑制機能の因果関係を検討することが目的であったため,交差遅れモデルを用いた分析を行った。その結果,8月時点の感情理解と抑制機能は12月時点の感情理解と抑制機能にそれぞれ影響を及ぼしていることが明らかにされた。また,8月時点の感情理解は12月時点の抑制機能に,8月時点の抑制機能は12月時点の感情理解に影響していることが示された。12月時点の感情理解と抑制機能は3月時点の感情理解と抑制機能にそれぞれ影響を及ぼしていた。12月時点の感情理解は3月時点の抑制機能に影響を及ぼしていたが,12月時点の抑制機能は3月時点の感情理解に影響を及ぼしていなかった。 従って,感情理解力の発達が,抑制機能の発達に影響を及ぼすことはあっても,抑制機能の発達が,感情理解力の発達を促すとは限らないことが示唆された。今後は,4時点目の調査を実施し,感情理解力の重要性を確認するとともに,社会情動的スキルに感情理解と抑制機能がどのような影響を及ぼすのかを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究が進められているため,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順次行われているため予定通りに進める。今後は,4回目の調査を行い、1回目~4回目の縦断研究の分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度の進捗状況が当初予定より遅れたことにより,今年度の使用額が増額したことに加え,新型コロナウィルスの影響で参加予定の学会が中止になったため,次年度使用額が生じた。翌年度に予定通り4回目の調査を実施することで調査にかかる諸費用が捻出される。また,調査によって得られたデータをまとめ,論文投稿や学会発表を行う予定である。
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