2019 Fiscal Year Research-status Report
1950~60年代日本の漁業地域における学校内外の生活指導に関する歴史研究
Project/Area Number |
17K04534
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鳥居 和代 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (30422570)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 生活指導 / 標準語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1950~60年代の戦後日本の漁業地域において、家庭や地域を巻き込んだ学校内外にわたる生活指導がどのように展開されたのかを明らかにすることにある。2019年度は、次のような調査研究を行った。 第一に、前年度に引き続き、東京大学教育学部図書室において、教育学者の大田堯や千葉県教育研究所が関与した、千葉県房総半島の最南端に位置する漁村における1950年代初頭の教育計画に関する報告書等を調査した。 第二に、上記漁村の小学校を事例として、1950年代初頭における標準語教育と方言教育の実践について調査研究を行った。千葉県の館山市立博物館本館所蔵の学校日誌を閲覧するとともに、館山市立図書館において、安房地方の漁村の歴史や方言に関する諸資料を収集した。また、当該時期に収録された安房地方の方言音声資料を入手した。 第三に、千葉県の銚子市公正図書館において、銚子の方言に関する郷土史料や、1960年代に漁村の小学校でことばなおしの実践に携わった元教員に関する資料を収集した。 とくに、第一と第二の調査研究によって、次のことが明らかになった。すなわち、(1)1950年代初頭の漁村の一小学校では、大田堯らの関与によって、標準語教育の見直しと方言の尊重ということばの実践の深化がみられたこと、(2)当小学校ではやがて標準語か方言かの二項対立を超えて、浜者(漁民)と岡者(漁民以外)との階層的な差異や、それに基づく子ども間の「劣等感」と「優越感」とを解消していくための人間関係づくりの視座が獲得されたこと、(3)その意味において、ことばの指導から生活指導の次元へと向かう実践の方向性が確認できることである。本成果は、教育史学会第63回大会において発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安房地方の漁村の小学校における標準語教育の模索と方言教育のありようを検討し、ことばの実践と生活指導との関連性を考察することができたため。また、その成果を学会で発表することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、次年度は当初計画していた千葉県への出張・資料調査が困難になると予想される。当面はすでに収集した資料の分析を進める。場合によっては、補助事業期間の延長、補助金の繰り越し等の対応をとる。
|