2018 Fiscal Year Research-status Report
障害・慢性的疾病等による困難を抱える若者の主観世界の理解とその方法論の検討
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17K04538
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
土岐 邦彦 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (50172143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舩越 高樹 京都大学, 学生総合支援センター, 特定准教授 (40792015)
高口 僚太朗 岐阜大学, 教育推進・学生支援機構, 特任助教 (80824341)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 主観世界 / 障害受容 / ターナー症候群 / ナラティブ・アプローチ / オーラル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,障害や慢性疾患等によって独自な「生きづらさ」を抱える若者たちを通して,現代社会に生きる若者をいかに理解するかという問題に接近する。そのために①独自な困難さを抱えた若者の「生(Life)の現実」を,質的・事例的な聞き取り調査により明らかにするとともに,②その調査方法とケース記述との相互的な関係の省察を通して,当事者の主観世界に接近するための方法論に関する問題の所在を検討することを目的とする。その際,「障害」や「疾患」という生物的制約を考慮しつつも,さらに彼らの語りの中に潜む「一人称的な世界(主観世界)」に注目し,社会的・文化的な視点を位置づけた若者理解の可能性を探るものである。 今年度も昨年度に続き,障害や慢性疾患のある当事者への聞き取り調査及び研究報告会を実施した。加えて,聞き取り調査において,今年度から高口僚太朗が臨床社会学,医療社会学の立場から本研究に研究分担者として加わったことで,昨年度以上に充実した取り組みが可能となった。また,本研究の課題の一つである方法論に関する問題の所在の検討についても進捗があった。ナラティブアプローチを用いた研究に触れたことでそれは得られた。さらに今年度は,ドイツでの調査も実施した。具体的に,「ベルリン自閉症児・発達障害児 親の会」への聞き取りを実施した。 今年度の実績は,著書1冊,投稿論文3本,学会報告4報,依頼報告1報,全体研究会1回(2018年6月10日実施),海外調査1件である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先述の通り,高口僚太朗が研究分担者として加わったことで,慢性疾患の当事者を対象とした領域で大きな成果を上げたと言える。とくに,小児期発症1型糖尿病,ターナー症候群の当事者を対象とした研究は,本研究課題においても新たな視座を与える結果となった。 障害のある当事者の内面理解においては,これまで同様,研究代表者(土岐邦彦)と研究分担者の舩越高樹が行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の取り組みを契機に,本研究課題が対象とする障害のある当事者と慢性疾患の当事者とで共通点があることが明らかとなった。具体的に,本研究課題が射程としている研究対象者が「一見,普通に生活しているように見える人々」であるという点である。別言すれば,診断名が異なる当事者の背景には,いわば,他者からの眼差しにおいて「一見,普通に生活できているように見える」ことでむしろ生じている困難さやしんどさがあるのではないかと言える。今後は,当事者に孕むそうした背景や事情にも焦点を当てた聞き取り調査を実施してゆく。そして,そのことが当事者の主観世界にどのような影響を及ぼしているのかまで捉えようと考えている。また,ドイツでの調査は次年度も継続し,研究成果として日本臨床教育学会で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は想定していた以上の調査結果が得られた。このことにより,今年度の調査スケジュールを見直し,次年度実施可能な調査は次年度に変更した。これにより,旅費も次年度に繰り越すことにした。
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Research Products
(7 results)