2017 Fiscal Year Research-status Report
論理構造モデルを用いた論理的思考の育成に関する実験的―教育哲学的研究
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17K04578
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
太田 明 玉川大学, 文学部, 教授 (30261001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平嶋 宗 広島大学, 工学研究科, 教授 (10238355)
林 雄介 広島大学, 工学研究科, 准教授 (70362019)
茅島 路子 玉川大学, 文学部, 教授 (80266238)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トゥールミン・モデル / 三角ロジック / ワラント / 批判的思考 / ソクラテス的方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標として設定したのは、(A) 議論の論理構造モデルの基礎的研究(B)議論実践における論理的要素の抽出と論理構造モデルの提出(C) 論理構造モデルを用いた論理の組み立て活動とその支援環境の設計・開発 (D) 構築した支援環境の評価と考察である。初年度は主に (A)(B) および(C)の一部についての研究を行うこととした。 (A)については、トゥールミン・モデルといわゆる「三角ロジック」における「ワラント」(warrant)の問題を集中的に検討した。「三角ロジック」は6要素からなるトゥールミン・モデルから主張・データ・理由(づけ)の3つを取り出したいわば簡約版であるが、おそらくその実践的な扱いやすさから、作文教育の指導や論理の組み立てのPC上での実装などで広く使われている。しかし、私の見るところ、トゥールミン・モデルにおける「ワラント」、三角ロジックにおける「理由(づけ)」の意味が理論的には明快でない。とりわけ、三角ロジックでは形式論理学における三段論法的推論とのちがいが充分に見えてこない憾みがある。この点は論理の組み立て活動の支援環境の設計・開発にとっては極めて重大である。他方、「ワラント」の性格づけに対してはトゥールミンによるモデルの提唱当時からも批判があった。そこで、トゥールミン・モデルに関するレビュー的研究、法哲学における法的推論の研究をもとに、「ワラント」の意味を明らかにしようとした。その結果、ワラントは「正当化された一般化」という機能であり、それが明示的に言明された場合に、そのような機能を持つ「推論規則」と捉えるべきであるとの見通しを得た。この点から見ると、三角ロジックにおける「理由(づけ)」の捉え方は理論的には充分ではないとの結論に至った。また、ソクラテス的対話における対話の展開構造を討議倫理学のそれと比較し、その特徴を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究業績の内容で述べたように、目標(A)に関しては一定の成果を得ることができたが、(B)(C)に関しては十分な成果を上げることができなかった。その理由は、(B)については、トゥールミン・モデルと三角ロジックにおける「ワラント」をどう捉えるかに疑問が生じたために、三角ロジックにおける適切な質問項目の設定が十分に進まなかったこと、また、これに対応するシステム運用のチェックに時間がかかったためである。その結果、三角ロジックに基づく論理の組み立て支援プログラムの実装と実験に進むことができず、また(C)の評価を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
トゥールミン・モデルと三角ロジックにおける「ワラント」については一定の成果を得ることができたので、今年度はそれに基づいて研究を進める。とりわけ論理の組み立て支援プログラムの実装と実験に次の二点に留意しつつとりかかる。第一に、前年度の成果を踏まえて、「ワラント」の位置づけを考慮して、タブレットPCにおける質問項目をより適切なものに修正する。第二に、タブレットPCによる実験だけに限定するのではなく、タブレットPCだけでは実験が難しいと思われる質問については、質問紙(マークセンスおよび記述)による実験などを取り入れる。
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Causes of Carryover |
実験のための論理組み立て支援環境の設計の予備的考察に時間を費やしたこと、また課題及びシステム運用のためのチェックに時間を取っため,システム利用実験の予定が今年度末から来年度初めに変わったためである。
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Research Products
(3 results)