2017 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Experience Oriented Design and Evaluation of Project-based Learning
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17K04588
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
長田 尚子 立命館大学, 共通教育推進機構, 准教授 (90552711)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 産学連携PBL / コーオプ演習 / 活動デザイン / パターン・ランゲージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、産学連携環境のプロジェクト型学習(以下、産学連携PBL)において、学習者の自律的な活動を支援する方法を検討することである。そのために、授業者や研究者が主体となった学習支援や学習デザインの在り方を見直し、産学連携PBLにおける学習者の経験(エクスペリエンス)に着目し、1.経験を研究対象とする関連分野の調査、2.PBL参加者の経験の記述、3.エクスペリエンスデザインとしてのPBLの設計と評価、4.産学連携PBLにおける学習支援方法の確立、の4つの研究項目を設定した。 初年度の平成29年度では、研究項目の1.および2.を中心に進め、3.および4.については準備を行った。研究項目の1.および2.として、ユーザエクスペリエンス研究が進んでいるヒューマンインタフェース分野を中心に研究会および学会に参加した。その中で、学習者による経験の記述と活動デザインを目指しているパターン・ランゲージに着目し、産学連携PBLの1つである立命館大学のコーオプ演習を題材として、学習者の経験の記述を踏まえたパターンの記述を行い、パターン・ランゲージにまとめた。本研究の計画段階では産学連携PBLに関連する授業のレポートやコーオプ演習の報告書の利用を検討していたが、過年度の履修生との振り返りと意見交換会の開催が実現し、彼らの経験にもとづいた具体的な経験の記述が可能になった。 本研究では、デザインされたエクスペリエンスを経験する立場の学習者と、エクスペリエンスを自らデザインする立場の学習者という2面性を想定し、その2面性を具現化するための実践的研究環境として用いる。この環境を立命館大学のコーオプ教育プログラムの中の複数科目で実現していくために、個別の科目の授業改善、それら科目のカリキュラム的な検討もあわせて進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次の3点から、おおむね順調に進んでいると判断した。 第一に、産学連携PBLの経験者による振り返りと意見交換会を開催し、産学連携PBLの活動の中の様々な場面を振り返り、事例を抽出し(うまく進んだこと、うまく進まなかったこと)、さらに意見交換を行うという経験の記述のための流れを確立できたことである。この環境を通じて、産学連携PBLの経験者による対話データの取得も行うことができた。次年度には早速このデータを検討し、質的分析を通じて、経験の扱い方の具体的な検討に入る。 第二に、産学連携PBLにおける経験の扱い方を考える上で、1つの具体的な分野として、パターン・ランゲージに着目し、開発も行うことができたことである。パターン・ランゲージに関する実践が進んでいる分野の研究会に参加して検討を進め、パターン・ランゲージのアジアの国際学会であるAsianPLoP2018に採択され、発表することを通じて、関連分野の研究者や実践者からのコメントを得ることができた。次年度は、このパターン・ランゲージをベースとして学習者が活動をデザインするという場面を設定し、学習者による自律的な活動デザインの在り方の検討から入ることが可能である。 第三に、本研究を包含するキャリア教育の分野において、学習者による自律的な学習活動に関する検討、カリキュラム・マネジメントからの検討、産学連携PBLの多様な実践の検討、という背景分野の検討も深めることができた点である。近年アクティブ・ラーニングの導入が進んでいるが、一方で、単一の科目の改善に終始し、大局的な観点からの検討が浅くなりがちであることが問題提起されている。そのような中で、本研究では対象分野が抱える背景的な問題も捉え、キャリア教育学会およびWALS2017での学会発表や立命館高等教育研究への論文執筆を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度、31年度の研究活動を効果的に進めるために、具体的な4つの研究項目ごとに今後の方策を述べる。 研究項目の1.としては、平成29年度にヒューマンインタフェース分野におけるユーザエクスペリエンスのデザインに着目し、パターン・ランゲージを中心に検討を進めた。平成30年度にはその他にも「経験の仕方を研究対象とする」という立場をとる認知科学の越境的学習論やヒューリスティック研究、経営学の人的資源管理分野における経験学習論などの検討を深め、本研究としての経験の扱い方をより明確にする。研究項目の2.としては、平成29年度に開発したパターン・ランゲージの内容の継続的な改善と、経験者による対話データの質的な分析を行い、経験の記述に関する学術的な捉え方に関する検討を進める。研究項目の3.として、教室で行う産学連携PBLの支援プログラムと、実際の産学連携PBLの関係を想定し、専門家の意見も踏まえながら実践的研究環境の開発と改善を進める。研究項目の4.として、PBLに参加する学生を支援する側の課題も検討する。平成29年度は、学生アシスタントが、産学連携PBLの参加者に対してどういった働きかけをしているのかについて、データ収集することができた。平成30年度は、産学連携PBLのクラスを担当している教員の活動も分析するために、授業の参与観察を行い、学習者による自律的な経験のデザインをどのように支援できるのかを検討する。 以上それぞれの研究項目を総合的にまとめ、関連学会の研究会や大会で発表を行う。
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