2017 Fiscal Year Research-status Report
民生委員・児童委員を介在させた学校・家庭・地域の連携協力のあり方に関する研究
Project/Area Number |
17K04636
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
天野 かおり 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (20551625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 愼之輔 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (30325047)
佐々木 保孝 天理大学, 人間学部, 准教授 (30403596)
志々田 まなみ 国立教育政策研究所, 生涯学習政策研究部, 総括研究官 (30435044)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 学校・家庭・地域 / 学校運営協議会 / 地域学校協働本部 / 民生委員 / 児童委員 / 学校支援地域本部 / 家庭教育支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「学校運営協議会制度(いわゆるコミュニティ・スクール)」と「地域学校協働本部」の取組が進められ、地域の教育力の向上が期待される一方で、これまで以上に子供の教育環境の格差の拡大がもたらされる面があるという問題意識にもとづき、民生委員・児童委員を介在させた学校・家庭・地域の連携協力のあり方について考察することを目的としている。 従来、学校・家庭・地域の連携・協働という文脈においては、学校と地域、あるいは学校教育担当部局と社会教育担当部局との連携・協働体制の構築が重視され、取組が推進されることはあっても、家庭と学校、あるいは家庭と地域との関係について主要な関心が向けられることはおよそない傾向にあったと言ってよい。しかしながら、子供の育ちを考えるならば、家庭教育の存在を抜きにして構想することなどできないし、学校教育と社会教育だけが子供の教育機会のすべてではない。家庭教育支援は社会教育の範疇に含まれるのではあるが、そうは言っても家庭教育そのものは学校教育と社会教育とは別個に存在することを踏まえ、本年度は、家庭教育支援を手がかりに、学校・家庭・地域の連携協働について検討を行った。 その結果、家庭教育支援の取組は、「子ども・子育て支援」という、より大きな潮流の中に位置づけた上で、生涯学習という視角から俯瞰することが必要であることが指摘できた。さらに、民生児童委員や主任児童委員をこれまで以上に積極的に学校・家庭・地域の連携協力のネットワークに取り込むことは、教育と福祉の領域を隔てる壁を低くし、地域の課題に対して教育と福祉の両面から広角的にアプローチする可能性を切り拓くことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで本研究グループが取り上げてきたコミュニティ・スクールの事例において、民生委員・児童委員を学校運営協議会委員に迎えているケースはごく僅かであったこと、また、先行研究を概観してみても、学校教育との関わりにおいて民生委員・児童委員に着目した研究は決して多くないことを確認した。さらに、民生委員・児童委員を学校運営協議会委員に迎えていたとしても、入学式や運動会といった学校行事に民生・児童委員が招待されて列席するといった程度の関与にとどまっており、それ以上の関わりについては知られていない実態も把握することができた。こうした研究成果を踏まえ、本年度は、民生・児童委員がコミュニティ・スクールにどの程度、どのような形態で関与しているのかを質問紙調査で明らかにする計画であった。 質問紙調査の枠組みについては、コミュニティ・スクールに民生・児童委員が関与していない場合でも、学校との連携あるいは協力関係がどのようなところにみられるのかについておよその傾向を把捉できるよう構想することができた。しかし、質問紙の配布先や、それに応じた配布と回収の具体的な方法、さらに質問紙の内容の微細な点に立ち入った検討が残された課題となっている。そうした課題を克服すべく、本研究代表者と交流のある社会福祉協議会等を通じて、プレテストを実施できるよう準備を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究代表者と交流のある社会福祉協議会等を通じて、まずプレテストを実施する。その結果を踏まえ、質問紙の配布先や、それに応じた配布と回収の具体的な方法、さらに質問紙の内容の微細な点に立ち入った検討を行う。その後、全国に向けて質問紙の発送と回収作業を実施し、次いで集計に入る。 それと同時に、質問紙だけでは、全国の先駆的な事例を抽出することは困難であると予想されるので、都道府県レベル、市町村レベルの教育委員会や社会福祉協議会等の担当部局と連絡を取り、情報提供を依頼する。質問紙調査による分析と提供された情報とを関連づけた考察を行いながら、先駆的な事例について、インタビュー調査を実施する。 最終的に、民生児童委員や主任児童委員をこれまで以上に積極的に学校・家庭・地域の連携協力のネットワークに取り込むことは、地域住民を地域づくりの主体として成熟させる可能性を高めることを検証できるであろう。
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Causes of Carryover |
質問紙等の印刷や封緘、発送、回収のための費用、さらに、それらの作業とデータ入力の作業のためのアルバイトを雇用する費用等が使用されないまま残っている。平成30年度中にそれらの遅れを早い段階で取り戻し、その結果を踏まえたヒアリング調査の設計を行っていく計画である。
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