2017 Fiscal Year Research-status Report
Astudy of Localization and Globalization of Secondary Education in Samoa
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17K04682
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
奥田 久春 三重大学, 教養教育機構, 特任講師(教育担当) (30535373)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大洋州後期中等教育資格(PSSC) / ナショナル化 / インターナルアセスメント / ニュージーランド大学入学試験 / リージョナル試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
大洋州7カ国で実施されていた地域共通の後期中等教育資格(PSSC)試験が2013年に廃止され、各国が独自の試験を実施するようになった転換点に着目しつつ、そこにはどのような背景があり、どのように変容してきたのかを明らかにした。 その背景についてニュージーランド大学入学試験からの脱却とPSSCの導入の背景、PSSCの質的改善と制度的変遷、廃止に至った経緯と各国独自の試験導入という大きく3つの流れから、先行研究や文献資料から探り、分析を行った。またPSSC試験の内容と特徴を整理した上で、各国独自の試験の内容を分析して、どのように変わったのか、そこにPSSCの影響はどの程度見られるのかを考察した。 それらの結果、もともとサモアをはじめとして各国で受験されていたニュージーランド大学入学試験が廃止されたこととニュージーランドのForm6の試験に内部評価(インターナルアセスメント)が導入されていたため、各国もそれと同等の資格試験が必要となりPSSCが導入されたことを明らかにしてきた。更にPSSC実施母体であるSPBEAが、単なる資格試験の開発・実施だけでなく、教員や行政官が内部評価を効果的に行うための研修や、更にいずれ各国が独自で試験を行うことができるような研修を行う機能を有していたことを明らかにした。 2013年以降のPSSCに替わる各国独自の試験にはPSSCとの連続性と独自性が見られた。そうした意味でPSSCの廃止は地域共通試験からの脱却ではなく、PSSCの継承であり、その上で各国独自のローカル化が図られていると考察した。 これまでの研究成果をオセアニア教育学会大会にて口頭発表を行うとともに、『三重大学教養教育機構研究紀要』にも論説として発表した。その上で、上記内容の具体的詳細についての情報や資料を収集するべくニュージーランド、サモア、フィジーにて現地調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり小島嶼国の教育、サモアの教育政策、大洋州後期中等教育資格(PSSC)に関する先行研究、文献資料による調査を進めることができた。その結果としてPSSCの概要と変遷についての基本的な情報をまとめることができた。 これら研究成果をオセアニア教育学会大会で口頭発表するとともに、『三重大学教養教育機構研究紀要』にて論説を発表した。 またオークランド大学、サモア国立大学と教育スポーツ文化省、フィジーのEQAP(旧SPBEA)、南太平洋大学での現地調査を行い、基礎的かつ貴重な統計データを収集することができ、また日本では知りえないPSSCの問題構成、内容、採点方法などの特徴、廃止の背景についての情報を得ることができた。更にこれら研究機関や行政組織と今後の研究への協力や指導を仰ぐとともに、今後実施する学生や教師へのインタビュー調査についての打ち合わせをすることができ、将来的な共同研究についても意見交換することができた。 これらの調査を踏まえ、ローカル化と国際標準化についての研究の枠組みを「背景」「変容」「影響」として検討を進めることができた。 しかしながら、サモアからの卒業生の進路状況など未公開の情報や中等学校でのインタビュー調査、授業の参与観察については研究倫理の手続きが必要となるため今年度は実施できず、そのための諸準備と現地での打ち合わせにとどめた。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り研究を進めていく。今年度収集したデータや資料の分析を継続し、また現地にて先行研究の収集とレビューを進めていく。 特に現地調査では、サモア教育スポーツ文化省にてインタビュー調査を実施するとともに、中等学校での教員と生徒へのインタビュー調査を実施する。またサモア国立大学にて教育学部の協力のもと学生への調査を行う。同じくニュージーランドのオークランド大学にてサモアをはじめとした島嶼国出身学生へのインタビュー調査を実施する。フィジーにおいても南太平洋大学にて学生に同様の調査を実施する。EQAPを訪問し、調査の進捗と成果について報告し指導を仰ぐなど、事実確認も行うこととする。なお、ニュージーランド外務省での調査については、当初はサモア中等教育のカリキュラムへの影響力を想定していたが、研究を進める中でむしろオークランド大学との繋がりがあること、外務省のPSSC自体への関係性は薄いことが分かってきたため、調査を実施せず、オークランド大学での調査に注力したい。 特にインターナルアセスメントがPSSCの特徴となっており、その起源をニュージーランドに求め、どのようにサモアをはじめとした諸島嶼国に伝搬し、発展していったのかという影響について探っていく。そのことで本研究のテーマであるローカル化と国際標準化の理論モデルの鍵概念としていきたい。またローカル化と国際標準化の分析の枠組みを更に検証しながら、理論モデルについて考察を行っていく。 その成果を日本教育学会、比較教育学会、オセアニア教育学会にて発表を行っていく。更にニュージーランド、サモア、フィジーの研究者との共同研究の可能性について意見交換し、国際的な発表の機会を探っていきたい。
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Causes of Carryover |
現地調査の日程で、現地の受入れ状況や研究者の所属先の業務から、当初の予定よりも1週間ほど短くしたことや現地でのインタビュー調査を次年度に実施する必要性が出たため、その諸経費(謝金)については減額となったことから、差額が生じた。その分次年度では予定よりも現地調査期間を1週間長くしその旅費、インタビュー調査の本格調査を行っていくための謝金等のために使用したい。
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