2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05290
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
梁 松 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60324399)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ブラウン運動 / 拡散過程 / 古典力学系 / 確率過程の収束 / 低次元 |
Outline of Annual Research Achievements |
「拡散過程のノンランダムな古典力学系による導出」という研究課題において、十分に高い初期エネルギーを持たない環境粒子も存在するモデルに関し、低次元の場合について研究した。具体的には、理想気体と呼ばれる無限個の軽粒子を含む環境に一つの重粒子を入れ、重粒子と各軽粒子の間はノンランダムな古典力学法則に従って相互作用しながら動くとし、また、粒子間相互作用はあるコンパクトな台を持つ斥力的ポテンシャル関数により与えられるというモデルを考える。軽粒子達の質量が0に収束すると同時に、物理法則により、それらの速度と空間密度も一定のオーダーで高くなる。この時、重粒子の位置―速度過程はある拡散過程に収束することを証明するのが目的である。重粒子も軽粒子達も同時に動いているのが一番の難点である。 初期エネルギーが十分高い軽粒子については、重粒子との相互作用は軽粒子の運動方向と速度を少ししか変えられず、軽粒子の速度の初期速度方向における成分はある程度保ったまま非常に短時間で相互作用の有効領域を通過する。よって、軽粒子の挙動は、重粒子が動かないものとして得られる「凍結近似」と呼ばれるもので近似することができる。しかし、軽粒子の初期エネルギーが十分に高くない場合、相互作用有効領域における滞在時間は非常に長くなる可能性があり、滞在時間の有界性が成り立たなくなる。特に、次元数が低ければ低いほど、この特異性の処理が難しくなる。
今年度は、上述の低初期エネルギーを持つ軽粒子が存在するモデルについて、凍結近似粒子及び環境軽粒子の有効領域における滞在時間をより精密的に評価することにより、低次元の場合についても、目標にしている重粒子の位置―速度過程の拡散過程への収束の証明を可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定として、拡散過程の古典力学系による導出という研究課題において、重粒子と軽粒子達の間の相互作用を与えるポテンシャル関数は有界であるが、非常に低初期エネルギーを持つ軽粒子も存在する場合について、軽粒子達の質量が0に収束し、同時に軽粒子達の速度及び空間密度が一定のオーダーで高くなるとき、重粒子の位置―速度過程が拡散過程へ収束することを証明するのが目標であった。そのために、凍結近似粒子の相互作用有効領域における滞在時間をより精密的に評価することが必要である。今年度はこの精密評価を行い、特に、凍結近似粒子のある不変量を含む項を無視してはならないことが分かった。しかし、この方針を軽粒子達の初期エネルギーが下から有界である場合に適用すれば、今まで解けなかった「低次元の場合についても同じ収束が成り立つか」という問題を解決できる可能性に気付いた。より現実に合う物理モデルにするために、低次元数の場合についても同じ結果を証明することもとても大事であるので、こちらの問題の解明を優先した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究予定としては、今まで準備したGronwall の補題の拡張及び軽粒子の相互作用有効領域における滞在時間の精密評価等を用いて、拡散過程の古典力学系による導出という研究課題において、(1)ポテンシャル関数は有界であり、軽粒子達の初期エネルギーの下限は0である場合について、(2)ポテンシャル関数は原点の近くでは無限大に発散する(即ち、粒子間距離が0に近づくとき、相互作用の斥力は非常に強くなる)場合について、それぞれ研究する予定である。
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