2018 Fiscal Year Research-status Report
物質循環を考慮した数理モデルの作成による生命システムの自己組織化原理の解明
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17K05361
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
上田 肇一 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (00378960)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 数理モデル / 真正粘菌変形体 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の環境変化に対する適応性の仕組みの理解は,生命科学のみならずロボット開発など工学の研究分野においても重要な課題である。生物の環境適応性を理解するために,自己組織化現象(多数の要素が局所的に相互作用することによって発生する空間大域的パターン形成)に対する研究が盛んに行われている。真正粘菌変形体においては,忌避物質に接した後に移動方向の変化が発生するが,移動方向が変化する際に収縮弛緩振動の空間位相差の発生や細胞先端部における化学物質の局在構造の生成などの自己組織化現象が観察されることが報告されている。
本研究では,自律分散型ロボットのアルゴリズム提案を目指し,真正粘菌変形体の数理モデルを用いてパラメーター自動チューニングモデルの作成,及びパラメーターの更新による効率的な原形質流動の再現を試みた。真正粘菌変形体のモデルとして1次元空間上に配置された細胞の収縮弛緩運動と細胞間を流れる流体現象を考慮した数理モデルを作成した。自動チューニングモデルにより変化させるパラメーターとして,収縮弛緩運動時に発生する力(バネ定数に対応するパラメーター)を採用した。また,パラメーター値を更新するルールとして,各細胞における流量を最適化させるアルゴリズムを提案した。数値実験の結果,系全体として流量が増加する方向にパラメーター値が変化する様子が観察され,実際の真正粘菌変形体で観察される細胞先端が柔らかくなる現象を再現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物質循環の効率性を向上させる方向にパラメーターを変化することで,自己組織的にパターン形成が発生することを示すことに成功した。これにより,研究目的の1つであった,パラメーターのダイナミクスを含めた自己組織化現象を実現することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究では細胞の位置を固定した状態で数値実験を行なったが,移動運動を再現できるようにモデル方程式を改変し,細胞の環境適応的な運動を再現することを試みる。
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Causes of Carryover |
パラメーターチューニングアルゴリズムの解析を優先するために,真正粘菌変形体の数理モデル作成に関する研究打ち合わせを次年度に行うことにした。次年度に研究打ち合わせを行う。
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Research Products
(4 results)