2017 Fiscal Year Research-status Report
「あかり」赤外線全天画像に基づく黄道光微細構造の起源と進化の研究
Project/Area Number |
17K05381
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
大坪 貴文 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (50377925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 大助 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (30507835)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 黄道放射 / 惑星間塵 / ケイ酸塩 / 小惑星 / 彗星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、赤外線天文衛星「あかり」の全天サーベイ・データを基に、微細な構造まで詳細に再現した太陽系内惑星間塵雲モデル・黄道光モデルを構築することに取り組む。現在までに明らかにしてきた黄道光の大局的分布に加え、今後の解析で明らかにする空間微細構造を取り入れることで、過去のモデルでは不完全だった構造のモデル化を今後3年間で著しく進展させることを目的とするものである。 平成29年度は、これまで別々に作成が進められてきた「あかり」の中間・遠赤外線画像に関し、全観測波長バンド間の強度較正などの整合性をチェックし、正確に較正された半年ごとの全天マップをそれぞれ作成・解析することを目指していた。中間赤外線全天マップ作成と観測波長バンド間の較正作業にやや遅れが発生しているが、年度末に作業に区切りがついたので平成30年度に作業を進めていく。 その代わりに、本年度は中間赤外線分光観測スペクトルデータの整備に大きな進展がみられた。これまで拡散光源の解析を難しくしていた検出器面への迷光・散乱光の特性を特定し除去することで、約70観測領域に関して、波長5-12μmでの黄道光スペクトルを導出することができた。さらにすべてのスペクトルでケイ酸塩鉱物による超過放射フィーチャをとらえた。これにより、惑星間塵の鉱物組成(輝石・カンラン石)や粒径について制限をつけることができる。 一方遠赤外線全天マップに関しては、既に準備済みの遠赤外線画像を基に、複数の小惑星族の衝突由来と考えられる、微細構造の兆候をとらえることができた。微細構造抽出のための画像補正処理のテスト準備も進めたので、今後は全天画像データから、淡い小惑星ダストバンド構造を抜き出す作業を始める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「あかり」の中間・遠赤外線画像に関し、全観測波長バンド間の強度較正などの整合性をチェックし、正確に較正された半年ごとの全天マップをそれぞれ作成・解析することを平成29年度内におこなうことを目指していた。今年度開催された「あかり」国際会議の主催者・組織委員会として、本研究の実働者の多くが時間をとられたこと、また、全天データの解析に関わっていた担当者の入れ替わりなどもあり、中間赤外線全天マップ作成と観測波長バンド間の較正作業にやや遅れが発生しているが、年度末に作業の見通しとおおまかな区切りがついた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、全天画像から微細構造を抽出するための画像補正処理を一気に進める。最初はフーリエ・フィルタ処理を採用し、空間幅が数十分角スケールの彗星ダストトレイルや数度スケールの小惑星ダストバンドを抽出する。これまでの観測で未確定だった微細構造も抽出し、対応する小惑星族を同定する作業を進める。上記で抽出した「位置」を固定したうえで、惑星間塵の3次元空間分布を考慮した黄道光モデルを基にフィッティングをおこない、微細構造の幅や強度などを再現する最適パラメータ・サーチを進める。
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Causes of Carryover |
平成29年度は大きな国際研究会として「AKARI 2017」研究会が東京で開催され、研究代表者・分担者ともにこの研究会に注力をした。特に研究代表者は組織委員としても準備をおこなっていたため、海外旅費が発生しなかった。平成30年度は、既に国際研究会での招待講演を依頼されており、そちらでの使用を予定している。また、本年度は全天データの公開がやや遅れたため、解析・データ蓄積に必要な機器の購入をまだおこなっていない。この予算は30年度の全天データ公開後に機器購入に使用予定である。
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Research Products
(9 results)