2018 Fiscal Year Research-status Report
The physical environment when stellar hyper flares occur
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17K05392
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
坪井 陽子 中央大学, 理工学部, 教授 (70349223)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フレア / 星 / 偏光 / X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
恒星フレアは規模が大きいほど発生頻度が小さいが、全天X線監視装置MAXIは90 分に1 度全天を監視し、無バイアスに効率良く恒星からの巨大X線フレアを捉える。今年度は、MAXI/GSCで検出した、高い銀緯(10度以上)にある天体のカタログを作成した。これは2009年8月から2016年7月までのデータを用いている。これにより感度は0.48 mCrabまでに至り、かつて同じ領域で作られたMAXI/GSCカタログ(Hiroi et al.2013)に比べ天体数は1.4倍に増えた。 また、ALMA, JVLA, Chandra, Herschel, and Spitzer という多波長にまたがるデータ群を用いて、2つのへびつかい座の点源が極めて若い原始星または原始褐色矮星段階にあることを確認した。それらの天体の質量は現在、太陽質量の0.01-0.03倍であり極めて小さい。また年齢は、アウトフローの運動学的年齢から考えて1000歳程度かそれ未満と考えられる。これらは比較的近い将来質量降着を終えそのまま褐色矮星に成長するか、またはさらに進化を続け恒星に成長すると考えられる。 フレアループの幾何をひもとく将来の開発機器として、湾曲させた結晶のブラッグ反射を用いた、X線偏光に感度の高い検出器の開発を行った。2018年度は、特に、反射鏡の母型の切削ピッチを細かくした反射鏡の性能評価を行なったが、角度分解能が従来に比べファクター分向上し、またそれに応じて、エネルギー分解能が向上したことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた「観測及び解析」は、(1)MAXI を用いてX線フレアサンプルを増やし、可視光の同時観測データとの比較を行うこと、また(2)X線フレアの頻度分布を得ること、であった。X線フレアのサンプルは、Deep Learning の使用など、サーチの仕方の工夫を行なった結果、光度の低いものまで含めて着実に数が増えている。また、同時観測に関しては、可視光(測光及び分光)だけでなく、電波の帯域においても茨城大学、山口大学との協力を得ることによりデータを取得していただいている。よって順調に進行中だと言える。 恒星フレアループの幾何を明らかにするための、「結像、分光、エネルギー広域X線偏光光学系の開発」に関しては、本年度は様々な結晶や結晶面を用いて、形状精度を追い込んでいく予定でいたが、今まで用いていた結晶及び結晶面に対しての形状精度でも伸び代があっため、それを追い込んだ。またこの形状精度の向上が角度分解能の向上につながっていることもX線ビームラインを用いて確認した。よってこちらも概ね良好に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
MAXI は本年度で稼働10 年を迎える。よってここで MAXI を用いた星の研究の総決算を目指す。「ハイパーフレア」を引き起こす天体をリストすることで、追観測でより詳細な研究を行うことができる。本研究でも、X 線望遠鏡衛星での追加観測を予定しているが、カタログ化し、優れた観測装置を持つ他のグループの観測機会も提供する。MAXI で検出された「ハイパーフレア」天体に関しては、小さなフレアとの比較を行うため、感度の高いX線望遠鏡衛星(チャンドラ、XMM-Newton、 NuSTAR)などでの追観測、もしくはアーカイブデータの解析を行う。これらの装置は分光能力も高いので、それぞれのフレアの物理的特徴も同時に調べる。さらに必要があれば他波長観測での追観測も行う。フレア頻度分布のハイエンドが星の物理パラメータのうち何と関連づけられるのかも探る。MAXI で検出した「ハイパーフレア」と太陽型星のスーパーフレア、および太陽フレアという、10桁にも渡るフレア規模の違いの中に、X 線から求めた物理量と上で述べたさまざまな物理量との間にユニバーサルな関係があるのかをサーチする。 偏光X線光学系は、星のフレアをどのように捉えられるか、シミュレーションで示す。偏光感度を実際に実験で測定し、衛星ミッション化(ハウジングなど)を行う。
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Causes of Carryover |
2018年度には、海外の国際会議での発表を予定していたが、実際には成果を出すのに専念したため、行かなかった。一方、現在、投稿論文を2編、ほぼ完成している。これらの2018年度に出た成果の国際会議での発表、及び投稿、を2019年度に行うために、あえて予算を残した。
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Research Products
(21 results)