2019 Fiscal Year Research-status Report
高精度X線分光を用いたプラズマ診断から探る銀河団ガスのダイナミクス
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17K05393
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
佐藤 浩介 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50453840)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 銀河団 / マイクロカロリメータ / 将来衛星計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河団の観測的研究としては、近傍のAbell2199銀河団やAbell 2147銀河団について、X線、可視光、電波を用いた多波長解析を行い、国内外の共同研究者とともに研究を進め、論文にまとめている。また、解析の過程で問題となったX線点源の取り扱いや銀河団の構成メンバー銀河との関連なども詳細に調べ学会等で報告を行った。同時に我々の銀河系内起源のフォアグラウンドを過去のX線衛星の観測データを詳細に解析し、太陽活動などとの関連性なども明らかにし学会等での報告を行った。一方で、これまで日本のX線天文衛星「すざく」のデータの中であまり扱われなかった地球からのX線の反射成分に初めて着目し、太陽からのX線データの解析をおこない、投稿論文として報告した。 実験的研究としては、誘電体カロリメータ技術と同様の技術を用いるマイクロ波を用いたカロリメータ読み出しシステムの構築について、JAXAや首都大学東京、産業技術総合研究所と協力して開発を行っている。また、将来の広視野高エネルギーX線分光衛星には欠かせないカロリメータを正常に駆動するためには、電磁ノイズの削減が欠かせない。特に衛星計画では重量やジオメトリなどに大きな制限を受けるが、我々は十分に電磁ノイズを抑えつつ、入射するX線を遮らない超伝導メッシュ入射窓の検討を電磁界シミュレータを用いて開始した。シミュレーション上では、十分な性能を検証することができ、実際の試作につなげる大きな知己を得た。 一方で、銀河団やその周りを繋ぐような大規模構造を観測するための将来衛星計画を立ち上げ、国内外の研究者とともにJAXA宇宙科学研究所のリサーチグループに提案し、グループ設立を受理された。これまでの我々の観測的、実験的経験をもとに立ち上げており、検出器は我々が開発しているカロリメータ技術を結集して実現することを考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測的研究は、銀河団の多波長解析を国内外の研究者とともに行うことにより、可視光の最新のデータ解析なども含めて多様な理解が進み、銀河団の力学的進化の理解が大きく進んだ。大量の解析を統一的に理解するためのデータ解析に時間がかかってはいるものの、近日中に論文は投稿できる見込みである。 実験的研究では、従来の研究計画に加え新型超伝導シールドを用いた電磁ノイズ遮蔽システムについて電磁界シミュレーションも行うことでカロリメータ性能の向上の知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の観測的研究をもとに、銀河団および銀河団をもとりまく宇宙の大規模構造への高温プラズマの理解が進んだ。これらの定量的な観測は未だ行われておらず、宇宙の大規模構造に付随するガスをふくめて温度数百万度で宇宙全体に広がる「バリオン」の観測的理解は宇宙物理学に残された大きな課題の一つである。我々は、この問題を解決するために、将来衛星計画を立ち上げ、JAXA/宇宙科学研究所にリサーチグループの設置を申請し、受理された。これらバリオンの定量化のためには赤方偏移した酸素等の輝線を指標とするが、その弁別のためには我々が実験的研究として開発しているカロリメータシステムが不可欠である。我々は、さらなるカロリメータ開発をすすめるとともに、衛星計画自体を遂行していくことを考えている。
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Causes of Carryover |
観測的研究において、観測データの解析に時間を要しており、論文にまとめるのに時間がかかっていることが挙げられる。特にデータのやり取りや議論などに時間がかかっており、計算機などの周辺機器の導入と論文投稿料に残額を使用する予定である。
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[Presentation] X 線分光撮像衛星 XRISM 搭載 Resolve の開発の現状 IV2019
Author(s)
Y. Ishisaki, R.L. Kelley, H. Akamatsu, H. Awaki, T.G. Bialas, G.V. Brown, M.P. Chiao, E. Costantini, J.-W. den Herder, M.J. Dipirro, M.E. Eckart, Y. Ezoe, C. Ferrigno, R. Fujimoto, A. Furuzawa, S.M. Graham, M. Grim, T. Hayashi, T. Horiuchi,以下 K. Sato,を含む34名
Organizer
日本天文学会2019秋季年会
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