2019 Fiscal Year Research-status Report
スラブ内地震の発生メカニズムの包括的検証~上部マントルから遷移層まで~
Project/Area Number |
17K05626
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 淳一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30361067)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 相似地震 / 蛇紋岩化 |
Outline of Annual Research Achievements |
九州下の深さ30-270 kmで発生しているスラブ内地震の震源再決定,メカニズム解の決定を行った.次に得られた震源・メカニズム解の空間変化とこれまでに推定されているスラブモホ面を参考に,スラブ地殻とスラブマントルの地震に分類した.その結果,地殻内地震は深さ100 kmを越えるとほとんど発生しなくなるのに対し,マントル地震は深さとともに増加し深さ約150 kmで最も活発になることが明らかになった.また地殻内震源の広がりからスラブ地殻の厚さを推定したところ,九州-パラオ海嶺の深部延長上で約12 kmと局所的に厚いことが示唆される.年代が50Maより古いフィリピン海プレートが沈み込んでいる南九州では,深さ80-150 kmで明瞭な二重深発地震面が形成されており,マントルの地震はプレート年代が古くなるほど深くまで発生しているという特徴がある. 震源位置とメカニズム解から同一断層面の隣り合うパッチで発生していると解釈できる中部地方下の深さ約350 kmで発生している2つの相似地震グループの震源パラメータを推定した(2つのグループ間の距離は20 kmほど).その結果,各グループ内の地震では応力降下量はほぼ一定であるのに対し,地震波放射エネルギー効率はグループ内で異なることが明らかになった.また,応力降下量は2つのグループ同士で10倍ほど異なるという特徴がある.これらの結果は,一つの断層面ではその強度はほぼ一定であるが,比較的近い断層であっても強度は断層間で大きく異なること,一方ですべりの動的プロセスは同一断層面上の隣り合うパッチのすべりであっても異なることを強く示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スラブ内地震の波形の類似性を用いた解析により,地震の類型化,起震応力場などの新しい情報を得ることができた.また,九州下のスラブ内地震について包括的な解析により,新しい地震発生モデルを提唱した.当初の研究計画以上に順調に進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
スラブ内地震のさまざまな特徴を抽出することができたが,その統一的な発生モデルを提唱するまでには至らなかった.地震波放射エネルギーなど動的パラメータの推定を進め,地震の発生モデルを高度化することが必要である.
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Causes of Carryover |
研究は計画通り遂行でき,成果をとりまとめた論文を国際学術誌に投稿した.しかし,結果の妥当性をさらに検証するよう査読者から指摘があり,追加解析を行っている.論文の再投稿は2020年度になる予定である.また,研究成果のさらなる精緻化のために,学会での発表および国内研究者との議論を行う予定である.上記の理由により,2020年度に論文出版費用および学会発表,研究打ち合わせ旅費が必要である.
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