2017 Fiscal Year Research-status Report
Uncertainty in tropospheric cloud adjustment and instantaneous radiative forcing
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17K05657
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
小倉 知夫 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (10370264)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 気候変化 / 放射強制力 / 対流圏調節 / 気候感度 / 雲 / 降水 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、まず5つの気候モデルを用いたCO2増加シミュレーションの出力データを収集した。CO2増加シミュレーションは、IPCC報告のための検討材料として各国の研究機関がこれまでに実施したものを使用した。各モデルでシミュレートされた気候変化のうち、雲と降水の対流圏調節に注目してモデル間の比較を行った。その結果、降水の対流圏調節の地理分布にモデル間で大きな違いが見られた。こうしたモデル間の違いに瞬時放射強制力がどの程度寄与しているのか確認するために、気候モデルMIROC3を用いた感度実験を実施した。具体的には、上記5つの気候モデルから出力されたCO2濃度4倍増の瞬時放射強制力を一つずつ、MIROC3に外部境界条件の熱源として与えて気候変化をシミュレートする。そして、5種類の熱源によって生じる気候変化を相互に比較することで、瞬時放射強制力に起因する雲と降水の変化のばらつきを定量化する。感度実験の結果、5つの気候モデルの間で見られた降水の対流圏調節のばらつきのうち、一部分は瞬時放射強制力の違いで説明できることが分かった。その一部分とは、亜熱帯太平洋、亜熱帯大西洋、アラビア半島、ノルウェー海、東南極の一部領域である。このうち亜熱帯太平洋に注目して、降水が変化する仕組みを詳細に調べた。その結果、瞬時放射強制力の違いにより大気循環の変化に違いが生じ、それが境界層における水蒸気収束を通して降水に影響を及ぼすことが分かった。 また、次年度以降に気候モデルMIROC5を用いた感度実験を実施することを想定して、MIROC5の性能を評価した。その結果、大気上端放射と雲について、MIROC5は同世代の他の気候モデルと比べて同等の成績を示した。しかし、亜熱帯海洋上の下層雲のバイアスはMIROC5で特に顕著であり、シミュレーション結果を解釈する際に注意を要することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に実施を予定していた作業は、(1)複数の気候モデルによるCO2増加シミュレーションの出力データを収集すること、および(2)各モデルでシミュレートされた気候変化を雲の対流圏調節に注目して相互比較することである。上記2点は、いずれも予定通り実施した。 当初の予定では、IPCC第6次報告に向けた最新のシミュレーション出力を入手することとしていたが、当該シミュレーションの実施が遅れているため、既に入手可能なIPCC第3次、第5次報告に相当するシミュレーション出力を利用することとした。このような方針変更は計画段階で想定していた範囲内であり、研究への影響は軽微である。一方、昨年度に実施した解析により、雲だけではなく降水の対流圏調節についても不確実性の要因を調査できた。これは当初の予定を越えて実現できた研究成果である。 このように、予定していた作業はおおむね完了しており、予定通り実施できなかった部分もあるが予定を越えて実施できた部分もある。従って、全体的に見て、研究は順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当初の計画に従い、気候モデルMIROC3に外部境界条件の熱源を与えて気候変化をシミュレートした結果を解析する。これは、昨年度に降水変化に注目して開始した解析を引き続き実施するものであり、今年度は雲と大気上端放射の変化に注目して解析する。具体的には、5つの気候モデルから得られた5種類の熱源によって生じる気候変化を相互に比較する。こうした比較により、瞬時放射強制力に起因する雲と大気上端放射の変化のばらつきを定量化する。また、大気上端放射の変化のばらつきにより地表面気温にどの程度のばらつきが生ずるかを見積もる。 なお、昨年度に得られた研究成果をポスターにまとめて国際学会で報告したところ、ポスター上に図示した瞬時放射強制力のデータが国内と英国の研究者の関心を呼び、データを共有することで共同研究を実施することとなった。共同研究の内容は、CO2濃度増加が降水の対流圏調節を発生させる仕組みに関するもので、既に共著の論文が1編投稿されている。このように新しく派生した研究についても、当初に計画した研究の妨げとならない範囲内で実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(B-A)が発生した主な理由は、初年度に予定していた人件費・謝金の支出を延期したことである。この人件費・謝金はデータ整理のための費用であり、整理すべきデータの多くは、IPCC第6次報告に向けた最新の気候シミュレーションの出力データを想定していた。しかし、当該シミュレーションは想定していたより進捗が遅れており、未だにデータの入手が難しい状況にある。そこで本研究では、当該シミュレーションの出力データの使用を初年度ではなく次年度以降に実施するよう計画を変更した。これに伴い、初年度に想定していたデータ整理は不要となり そのための人件費・謝金の支出も延期することとした。当該シミュレーションの出力データは本研究の2-3年度目には少しずつ入手可能になると予想される。そこで、出力データが今後公開され次第、初年度に想定していたデータ整理を実施する。それに伴い、延期されていた人件費・謝金の支出も本研究の2-3年度目に実施する予定である。
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[Journal Article] Effectiveness and limitations of parameter tuning in reducing biases of top-of-atmosphere radiation and clouds in MIROC version 52017
Author(s)
Ogura, T., H. Shiogama, M. Watanabe, M. Yoshimori, T. Yokohata, J. D. Annan, J. C. Hargreaves, N. Ushigami, K. Hirota, Y. Someya, Y. Kamae, H. Tatebe, and M. Kimoto
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Journal Title
Geoscientific Model Development
Volume: 10
Pages: 4647-4664
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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