2017 Fiscal Year Research-status Report
北太平洋渦解像モデルを用いた大気擾乱や潮汐が物質循環・生態系に与える影響の理解
Project/Area Number |
17K05662
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
笹井 義一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, グループリーダー代理 (40419130)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 英治 国立研究開発法人海洋研究開発機構, アプリケーションラボ, 主任研究員 (50359220)
野中 正見 国立研究開発法人海洋研究開発機構, アプリケーションラボ, グループリーダー (90358771)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 物資循環 / 生態系 / 中規模海洋循環 / 大気擾乱 / 潮汐 / 低次生態系モデル / 高解像度海洋大循環モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
大気擾乱や潮汐混合、海洋の中規模現象が海洋の物理環境変化を通じて、海盆スケールの物質循環・生態系に与える影響を理解するため、従来の低次生態系(NPZD)モデルと連携研究者が中心に開発した最適な環境(栄養塩や光)に適応した植物プランクトンの成長速度を表現できる低次生態系モデル(Flexible Phytoplankton Functional Type, FlexPFTモデル)を中規模渦が解像できる北太平洋渦解像モデル(OFES)にそれぞれ組み込み、シミュレーションを実施した。モデルの駆動力として、気象庁が提供する55年長期再解析データ(The Japanese 55-year Reanalysis, JRA55)を使用した。 研究代表者は、研究計画にあげた感度実験(大気擾乱や潮汐混合の影響がある場合とない場合)を実施する前に、それぞれの生態系モデルの再現性とその違いを確認するため、シミュレーション結果の解析を行った。従来のNPZDモデルでシミュレーションした結果に比べて、栄養塩や光環境に対する生物生産の応答が変化するFlexPFTモデルでシミュレーションした結果の方が、生物生産がより現実に近くなることが確認できた。 研究分担者は、潮汐混合のパラメタリゼーションを導入した準全球モデルを用いたシミュレーションを実施した。シミュレーション結果の解析から、多島海における鉛直構造の改善や太平洋における子午面循環の変化、クリル諸島海域における潮汐混合の強化に伴う北太平洋中層水の変化などを確認できた。さらに、黒潮続流域に置いて、物質循環に影響与える渦活動の経年変動の解析も実施した。 これらの研究成果は、国内外の学会等で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低次生態系モデルを組み込んだシミュレーションを実施する前に、中規模物理現象が解像できる北太平洋渦解像モデル(OFES)の駆動力として使用するJRA55データの整備(シミュレーションする期間のデータ取得や3時間平均値作成など)を行った。さらに、海洋の定常場(水温や塩分分布、循環場)をJRA55の気候値外力を用いて作成した。作成した海洋の定常場を初期値とし、植物プランクトンの成長速度が異なる二つの低次生態系モデル(NPZDとFlexPFT)を組み込み、シミュレーションを実施した。それぞれの生態系モデルの再現性とその違いを確認するため、シミュレーション結果の解析を行った。従来のNPZDモデルでシミュレーションした結果に比べて、栄養塩や光環境に対する生物生産の応答が変化するFlexPFTモデルでシミュレーションした結果の方が、生物生産がより現実に近くなることが確認できた。また、衛星観測データや現場観測データとシミュレーション結果の比較から、栄養塩や生物生産の水平分布や鉛直分布などの再現を改善する必要があることが分かった。 潮汐混合のパラメタリゼーションを導入した準全球モデルを用いたシミュレーション結果の解析から、潮汐混合の強化に伴う海洋内部の循環強化や形成される水塊が変化することが確認できた。さらに、黒潮続流域における渦活動の経年変動解析から、続流ジェットの安定不安定に伴い、渦活動が変化することが確認できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
低次生態系モデルのシミュレーション結果を改善するため、生態系モデルで使用しているパラメータチューニングを、比較可能な衛星データや現場観測データの空間分布や時間変化(季節や経年)と検証しながら実施する。生態系モデルのパラメータチューニングの結果、改善を確認できたら、大気擾乱と潮汐の影響を含む長期シミュレーションを実施し、二つの低次生態系モデルシミュレーション結果を解析し、その違いを議論する。大気擾乱や潮汐混合が引き起こす海洋環境変化についても同時に解析を進め、その知見を反映させる。さらに、研究計画であげた物質循環・生態系に与える大気擾乱と潮汐の影響をそれぞれ調べるための感度実験を実施する。
|
Causes of Carryover |
当該年度に予定していたパソコンやHDD購入を、シミュレーションデータの準備が整わなかったため延期した。また、出張期間短縮等のため、計上していた旅費より少なく済んだ。次年度に、解析用のパソコンとシミュレーションデータ保管用のHDD購入、国際会議等に出席するための旅費と参加費、英文校閲料等への使用を予定している。
|