2017 Fiscal Year Research-status Report
Study of complex formation and selectivity of new bis-beta-diketone type ligand using solvent extraction method
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17K05895
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
國仙 久雄 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 教授 (10251571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉原 伸敏 東京学芸大学, 理科教員高度支援センター, 准教授 (50158515)
梶山 哲人 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部地域技術支援部城南支所, 主任研究員 (50387346)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ビス-ベータジケトン / 溶媒抽出 / 分離能 / 希土類金属イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
日本は世界有数の非鉄金属消費国であり、金属は日常生活や産業活動に必要不可欠な鉱物資源である。一方で国内の鉱山が次々と閉山する中、金属供給を海外に依存する状況になっている。そこで,現存する資源の有効活用を目指す中で、都市鉱山と呼ばれる廃棄物中に含まれる金属が注目されている。これを分離回収する技術の構築が求められており、その中の溶媒抽出法に用いる新規抽出剤に関する研究を行った。溶媒抽出法は金属イオンの分離能が高く、分離操作時間が短く、高濃度金属溶液から分離回収できるという利点がある。 研究代表者らは、新規抽出試薬としてビスβ-ケトエステル型配位子であるHexane-1,6-diylbis (4,4,4-trifluoro-3-oxobutanoate):H2hdfob4)の抽出能や分離能の検討を行ってきた。この配位子は、対称性が高くフレキシブルな構造であるため、アルキル鎖長の制御によって単核錯体から2核及び鎖状の多核錯体までの生成が可能であった。しかしながら,H2hdfobにはエステル結合があり,酸や塩基によって加水分解される可能性がある. そこで本年度は、エステル結合がない配位子としてビスβ-ジケトン型配位子である1,14-diphenyltetradecane-1,3,12,14-tetraone:H2DTTを合成し、その抽出能や選択性の検討を行った。 さらに、H2DTTのフェニル基のパラ位に電子吸引基であるフルオロ基を導入した1,14-di-p-fluorophenyl-tetradecane-1,3,12,14- tetraone:F2PTTと、電子供与基であるメトキシ基を導入した1,14-bis(p-methoxyphenyl)tetradecane-1,3,12,14-tetraone:PMTTを合成し、希土類金属イオンの抽出能、分離能および抽出平衡の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度の実施計画では、アルキル鎖長の異なる配位子の合成、配位子の酸解離定数の測定、および金属イオンの溶媒抽出を予定していた。 29年度は、この計画の中の配位子の合成において変更を行った。すなわち、アルキル鎖長の効果に関する検討を次年度の検討事項に繰り下げ、置換基の効果を詳細に検討した。これは、得られた検討途中でデータから、選択性と抽出能の向上効果はアルキル鎖長を変えるよりも、配位子のドナーの電子密度制御を行う方法を先に検討するほうが効率よい研究が可能であると判断したためである。この検討方針で、新たな置換基を持つ配位子を合成し、抽出実験を行ったところ抽出能と選択性に関する良い結果が得られた。また、これらの新規配位子の酸解離定数は現在測定中である。 当初計画とは検討項目が前後したが、ベータジケトンのスペース(長さと剛直性)を変化させた検討項目は30年度に行う予定である。 以上のように、効率よい研究を行うために検討項目の順を変更したが、当初予定した実施項目に変更はないので、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度はアルキル鎖長やその種類を変えた配位子の合成を行うとともに、その物理化学的特性と金属イオンとの錯生成反応について検討する。29年度に得られた結果から、金属イオンの分離能が高くなると考えられる置換基によりドナー原子の電子密度を制御した配位子を用いた抽出実験も29年度と同様に行う。また、アルキル鎖の代わりに芳香環を導入したリジッドな配位子の合成を行うとともに、前年度までと同様に、その物理化学的特性と溶媒抽出法を用いた金属イオンとの錯生成反応について検討する。 <配位子の合成> 29年度に得られた置換基導入効果の知見を基に、高分離能が期待されるアルキル鎖を結合した配位子を合成する。ここでも、両端のβジケトンに電子供与性置換基もしくは電子吸引性置換基を導入する。また、アルキル鎖の代わりにリジッドな芳香環を用いた配位子も合成する。本項目は研究分担者の吉原が主に担当する。 <物理化学的性質> 本項目では、29年度と30年度に新たに合成した配位子の酸解離定数と分配定数を溶媒抽出法を用いて明らかにする。29年度と同様に、分配定数は溶媒抽出法でよく用いられる数種類の溶媒を用いて測定する。本項目は研究分担者の梶山が主に担当する。 <錯体の分離化学への応用> 本項目では平成29年度の検討結果を基に、新規に合成した配位子を用いて主に金属イオンの分離能を溶媒抽出法を用いて詳細に検討して、金属イオン分離能と配位子の構造との関係を明らかにする。特に、金属イオンの配位構造、イオン半径と配位子のβジケトン間の距離との関係を明らかにする。本項目は研究代表者の國仙が主に担当する。 <次年度に向けた実施項目>固体分離材を新たに合成する。合成法は、担体表面に長鎖アルキル基を表面修飾し、これに検討した高分離能配位子を吸着担持させて固体分離材を合成する。本項目は研究代表者の國仙と研究分担者の梶山が主に担当する。
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