2017 Fiscal Year Research-status Report
共生藻と光触媒を用いたフロー型フラットパネル水素製造システムの開発
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17K05955
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Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
山下 敏明 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (80191287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 利幸 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (50453535)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 共生藻 / 光触媒 / 酸化チタン / マイクロリアクター / 水素製造 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は糖製造装置と水素製造装置のそれぞれの基本的な研究を行った。糖製造装置の開発では、共生藻の糖分泌条件の検討および共生藻の状態評価法の開発を目的として研究を行った。共生藻が糖分泌をする際に、酸性条件が必要とされている。本研究で、培養液の含有組成の異なる酸性条件(初期pHは一定)を設定し、共生藻の糖分泌活性を検証した。処理環境下における炭酸化学種の状態を把握するためにIR測定を行ったところ、同じpHでも含有組成により光合成の基質となる溶存二酸化炭素の量が異なることが分かった。また、共生藻などの微細藻類の状態評価法として、藻類の自家蛍光を活用した自動セルカウンター法による評価方法を確立した。 水素製造装置の開発では、酸化チタンを成膜したスライドガラス上での水素発生を行うため、酸化チタンの光触媒作用を出すための必要最低限の厚さ300 nmを基準として、複数の厚さの酸化チタン薄膜をスライドガラス上に成膜した。次に、薄膜の表面粗さの調整を行うために、金属Ti成膜時のArガスの圧力を変え、ナノオーダーで表面の粗さが異なる酸化チタン薄膜をスライドガラス上に成膜した。続いて、酸化チタンを成膜したスライドガラス上へのPt最適担持量を明らかにして、種々の犠牲試薬(エタノールや糖水溶液)を用いて水素の発生量を調べた。また、酸化チタンを成膜したスライドガラスを用いて、流路の長さ、深さ、幅の異なるマイクロリアクターを作成し、糖の分解効率、水素の発生量を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は糖製造装置と水素製造装置のそれぞれの基本的な研究を行ったのち、最終的にそれらの結果を総合してフロー型フラットパネル水素製造システムを完成させる予定である。 現在、糖製造装置の開発では、共生藻の糖分泌条件の検討および共生藻の状態評価法の検討を行っており、酸性条件下での共生藻の糖分泌活性の評価を行った。また、糖分泌に必要な溶存二酸化炭素の量の知見を得ることができた。さらに、共生藻などの微細藻類の状態を評価する方法として、藻類の自家蛍光を活用した自動セルカウンター法による評価方法を確立した。 一方、水素製造装置の開発では、水素を発生するための酸化チタン成膜スライドガラスを作成し、効率よく水素を発生するための条件を明らかにした。また、酸化チタンを成膜したスライドガラスを用いて、流路の長さ、深さ、幅の異なるマイクロリアクターを作成し、糖の分解効率、水素の発生量を明らかにした。 このように、おおむね研究は順調に進行しているので、次に示す計画にしたがって小型フローシステムを作成していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は糖製造装置と水素製造装置を小型フローシステムとし研究を行う。糖製造装置の開発では、平成29年度の結果を踏まえ、フローシステムに切り替える。まず、共生藻をビーズに固定化するなどしてプラスチックまたはガラス管に入れ、バッチ中での溶存二酸化炭素の最適濃度をもとに、二酸化炭素を含む水を流し、最適供給量を決定する。また、試験管中での浸透圧変化の検討も考慮にいれ、最適流量を定める。加えて共生藻を長期に渡って生存できる条件(培養液の添加量や生育温度等)を明らかにする。最後に太陽光のもとで糖の発生量を調べる。 水素製造装置の開発では、小型マイクロリアクターに酸化チタンを成膜して水素発生を行い、最大水素発生のための各条件を明らかにする。酸化チタンの膜厚、助触媒(金属)の担持量、マイクロリアクターの組立てに関しては、これまで当研究室で得られた情報をもとにさらに詳細に調査する。次に、マイクロリアクターの流路製作および組み立では、市販のマイクロリアクターは材質や流路のサイズが限定され高価であり、また特注するとかなりの時間と費用を要するので、希望のサイズのマイクロリアクターを極めて安い費用で作製するために、ガラス、金属、プラスチック上にマイクロ流路を本校のマシニングセンタで自作する。流路製作後は、平成29年度の最適条件を基に、酸化チタンの成膜ならびに助触媒(金属)担持を流路上に行い、フロー状態で水素を採取する。また、糖製造装置の開発で得られた情報(糖の種類と濃度)を基に、太陽光のもとでの水素の発生量も調査する。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に進行しているが、まだ研究が進んでいないところ(Pt以外の金属触媒Au ,Pd, Agなどを酸化チタンに担持させ水素を発生する実験や種々の糖類を分解する実験など)があるため、残額が生じている。今後は、Pt以外の金属触媒を用いて触媒担持酸化チタン薄膜を製作し、水素発生や糖類の分解を行う予定である。
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