2017 Fiscal Year Research-status Report
高濃度の水ミストにより予混合火炎が消炎に至る機構に関する体系的理論の構築
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17K06202
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
大上 泰寛 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (00375122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 尚哉 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (20291784)
鶴田 俊 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (90197773)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 予混合火炎 / 水ミスト / ふく射 / 平均粒径 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高濃度の水ミストの添加により予混合火炎が抑制され消炎に至る現象のメカニズムについて,反応速度論的,および熱・物質輸送論的観点から解明を目指すものである.平成29年度は,主にふく射熱損失およびふく射再吸収が燃焼速度に及ぼす影響について評価を行った. 定常一次元平面火炎の数値計算結果より,消炎点近傍の水ミスト濃度が高い条件においては,ふく射熱損失を考慮した場合の燃焼速度の計算結果はふく射熱損失を考慮していない場合とくらべて大幅に小さい値となることが確認された.これは,消炎点近傍では,生成された水蒸気によるふく射熱損失が全熱損失に対して高い割合となるためである.しかしながら,ふく射熱損失を考慮した場合の燃焼速度の数値計算結果は,実験結果と比べ消炎点近傍において小さな値となる.これは,ふく射熱損失のみを表す伝熱モデルでは,熱損失の過大評価につながることを示唆している.よって,ふく射に関する伝熱モデルを検討する必要がある. 次に,ふく射再吸収が火炎全体の熱収支に及ぼす影響について調査した.水ミストを黒体と仮定した場合,ふく射再吸収量は水ミスト全粒子の断面積に比例する.すなわち,水ミストによるふく射再吸収量は,水ミスト粒径の関数となる.よって,水ミスト濃度が等しい場合でも,水ミストの平均粒径が小さくなるとふく射再吸収量が増大する.火炎上流の1 cmの領域内で水ミストがふく射を再吸収するとした場合,ふく射再吸収により発熱量に対して最高で10%程度の熱のフィードバックが存在することが分かった. 数値計算においては,これまでは水ミストの蒸発モデルとして,Takahashi and Katta(2009)の1段反応モデルを用いてきた.しかしながら,このモデルでは,水ミストの粒径の違いを考慮することはできない.そこで,水ミスト粒径の違いを考慮した蒸発モデルについても検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,主にふく射の影響に関して詳細に調査を行った.その結果,従来の理論とは別の水ミスト粒子径による影響が生じる可能性があることが分かった.これにより,次年度以降の着目点が明確となったことから,当初想定していた以上に順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は,とりわけ粒径に着目し実験,数値計算を行う予定である. 実験においては,現在の装置に対し粒径分布を変更できるよう改造を行う.そのうえで燃焼速度の測定を行うとともに,レーザーを用いた水ミスト粒子の蒸発挙動の観察を行う. また,数値計算においても,粒径分布の違いを表す物理モデルを組み込み計算を行う予定である.その際,ふく射再吸収を模擬したモデルを組み込むことで,ふく射再吸収における粒径の影響を調査する.
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Causes of Carryover |
平成29年度は数値計算に注力したため,実験で使用する継ぎ手の部品の消耗が少なく7143円の残額が生じた. 平成30年度以降は実験を当初の予定よりも多く実施することから,消耗品の購入に残額を利用する予定である.
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Research Products
(3 results)