2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K06460
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
井嶋 博 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90397604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 真範 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (20400129)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分析科学 / 計測工学 / 画像解析 / 数理工学 / 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
各種の糖がつながりあった糖鎖は,核酸,タンパク質に続く第三の生命鎖として認識され,その多くの生理作用に大きな注目が集まっている.このような糖鎖の分析や合成においては,それらの正確な構造分析と各糖成分の計量が重要となる.本研究では,従来から化学分野で用いられてきた薄層クロマトグラフィー(TLC)と呼ばれる試験板による分析手法について,画像解析と数理モデルを組み合わせた新たな分析手法を開発し,糖分析の高精度化をはかることを目的とし,また現在提案されている様々な分析手法と比較し本手法の有効性を確認する. 初年度は,TLCによる分析結果画像の数理モデルとして,既に本申請者らが提案している2次元ガウス関数を用いた単糖の定量化手法を,多糖のモデルに拡張させるため,様々な糖へ応用できることを実験を通して確認した.この研究においては,それぞれの糖が展開する現象を観察し,糖によって展開の仕方が異なることを確認した.この結果を利用することによって,当初計画していた糖の定量化だけでなく,どのような糖が溶液に含まれているかといった,精度の高い糖の同定についても今後検討できるようになった. また,より精度の高い分析を実現するため,溶液の展開現象を物理学的に理論化し,それを表現する数理モデルとして,時変速度を持つ2次元移流拡散方程式を導出し,TLC板の色濃度分布の変化から毛管現象により移動する溶液の時間変化をシミュレーション実験により求め,実際の実験結果と比較した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた内容は,1)単糖の定量化手法を多糖のモデルに拡張,2)より精度の高い数理モデルの調査と検討,の2点でありいずれも研究を行いその成果を国際会議に発表した。画像の取り込みにおいて計画していた可視光以外の分析については2年目に見送ることとなったが,上記の2)については独自の数理モデルを物理学的理論に基づいて構築し,シミュレーションに有効性を検証することができたため,当初計画より研究を進めることができた.以上のことから研究は順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,初年度に開発した糖鎖の分析手法を用いて,様々な糖の分析に応用し分析が可能な範囲と分析の限界について明らかにする.またスポットの重なりによりデータが欠損する事例を調査し,これまで正確な分析が困難であった条件に対しても本手法を適用し,提案手法の有効性とその分析の限界を確認する. さらに,糖鎖の合成中のサンプルを逐次得てそれらを分析することで,糖鎖構造の時間変化の解明に応用できることを確認する.
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Causes of Carryover |
計画していた数理モデルの検討を予定より進めることができ,モデルの導出と,有効性の検証を優先的に行った.このため当初予定していた可視光以外の画像解析を次年度に実施するといった計画の変更を行った.
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Research Products
(3 results)