2020 Fiscal Year Research-status Report
曲げ応力場における構造体コンクリートの耐久性評価および劣化予測システムへの展開
Project/Area Number |
17K06663
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
権代 由範 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (00553520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 智己 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (10552458)
月永 洋一 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (60124898)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コンクリート / 曲げ応力場 / 応力強度比 / 耐久性能 / スケーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、構造体コンクリートに作用する応力と各種耐久性との直接的な関係を実験的に検証し、各構造部材に生じる応力レベルの違いが劣化の進行に及ぼす影響を評価することで、より実環境に即した耐久性評価手法の確立に寄与しようとするものである。本研究課題では、特に、コンクリートに常時作用する曲げ応力を室内試験において再現する簡易システムを製作し、曲げ応力レベルの違いが各種劣化の進行に及ぼす影響の定量化を試みる。また、繰返し曲げ応力が作用したコンクリートを対象とする耐久性試験を実施し、各種曲げ応力作用下における劣化進行メカニズムの解明を目指す。 今年度は、昨年度改良した応力導入システムの問題点の抽出と整理を行うとともに、応力作用下及び繰返し荷重を作用させた供試体を対象に昨年度実施した耐久性評価の再現実験をベースに検討を進めた。同一調合のモルタルを対象とした各種耐久性試験の結果、応力強度比(最大応力に対する導入応力の比)の増加に伴い、劣化進行速度が増加する様相が確認された。凍結融解試験においては、試験開始前に行う事前吸水の段階で吸水量に差が生じていたことから、曲げによる組織の緩みにより表層の空隙構造に変化が生じる可能性が示唆された。繰返し曲げ荷重を作用させた供試体を対象に実施した耐久性評価では、載荷荷重の違いにより劣化の進行に相違が生じることが確認されたものの、載荷荷重の大きさによる明確な傾向は見られなかった。何れの実験においても、劣化進行メカニズムの解明に向けたさらに詳細な検討・分析が必要である。改良型の応力導入システムについては、おおよそ初期導入応力を保持することができたが、やはり乾燥収縮の影響による応力の減衰は完全に排除できておらず、今後は乾燥収縮も加味した評価にシフトする必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度も交付申請書に掲げた研究の目的を達するために、検討を進めてきた。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を背景に、感染拡大防止の観点から多数の研究協力者や実験補助員の動員を必要とするコンクリート実験や多くの試験体作製を伴う検証実験など、劣化進行メカニズムの解明にかかわる多くの重要な実験・分析を見合わせることとなった。また、試験体は作製できたものの、外出自粛や三蜜回避等によって実験補助員を動員できる期間が極端に限られ、実験・分析の実施に至らなかったケースも存在する。そこで、今年度は、実施可能な範囲で研究を遂行するため、小規模かつ少人数で実施可能と考えられたモルタル試験体を対象とした再現実験や歪測定等に焦点を絞って検討を進めた。このような状況により、実施可能な実験が限られ、当初予定していた応力作用下における劣化進行メカニズムの解明に向けた実験の大半に着手できていないというのが実情であり、現在は、次年度に向けてコロナ渦での実験の実施形態を模索しながら、改めて各種実験を遂行するための準備を進めている。 以上、コロナ渦において困難となった実験補助員の確保や移動規制などによって、当初の実験実施計画の大幅な修正が余儀なくされ、本研究の根幹をなす情報を取得するための重要な実験に身着手という現状にある。当初研究計画および実験方法等の評価や見直し、コロナ渦における対応等を検討しながら研究を遂行してきたが、進捗状況の総合的な評価としては「遅れている」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、当初研究計画および実験方法等の評価・改善を行いながら、研究目的の達成を目指し検討を進める。これまで、応力導入システムの不具合や実験における再現性や信頼性に関する問題により、当初計画通りに研究を遂行できない状況が続いてきたが、これらにより生じた研究の遅れを解消することを最重要課題として掲げ、実験計画、実験方法及び評価方法等の見直しを行い、成果の蓄積に努める。試験期間の再延長申請が認められた次年度は、再現実験や検証実験と並行して、曲げ応力作用下及び繰り返し荷重作用下における劣化進行メカニズムの解明に向けた実験を遂行する。これらを実現するためには相当数の実験を短期間で実施する必要が生じるが、試験体作製や実験の実施においては研究協力者が所属する機関での分担を依頼する。実験内容としては、まず、今年度実施できなかったコンクリート供試体を対象とした再現実験及び検証実験を行う。具体的には、調合を変化させて作製したコンクリート供試体を対象に,応力強度比を実験パラメータとした中性化試験、透過性試験、耐凍害性試験を行い、それらの劣化進行速度に違いを生じる要因の解明を試みる。この要因の解明に関しては、応力場におけるミクロ的組織構造の変化や微細ひび割れの発生性状等について検討し、必要に応じて各種実験・分析を追加する必要性が生じることが想定される。さらに、繰り返し荷重が作用したコンクリートの劣化挙動について、疲労試験を実施するとともに、疲労後の耐久性評価を実施し、曲げ応力履歴を有するコンクリートの劣化性状についても検討する。最終年度となる次年度は、これらの実験により得られた成果を総括し、報告書の執筆にあたる。
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Causes of Carryover |
今年度は、当初計画していたコンクリ―ト試験体を用いた再現実験や検証実験、劣化進行メカニズムの解明に向けたミクロ的組織評価が実施できなかった。そのため、コンクリート試験体の作製に要する材料費や実験に用いられる消耗品費、ミクロ的組織評価におけるサンプル作製・加工費、その他消耗品費に充てられるはずであった経費が未使用となった。加えて、再現可能で信頼性のあるデータの取得に至っていないという背景から、研究成果の発表にかかる旅費や各種データ整理にかかる謝金を支出していないという点も未使用経費の発生の一因となっている。さらに、今年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止措置として県外移動制限等もあり、研究打ち合わせは、基本的にオンラインによるWEB会議で実施されたため、旅費を支出していないという点も要因として挙げられる。 未使用となった経費については、当初計画に従い、今年度実施できなかったコンクリート実験における試験体作製費(材料費や加工費、消耗品費)および劣化進行メカニズムの解明に向けたミクロ的組織評価におけるサンプル加工費、その他消耗品費に充当する。また、各種実験を並行して実施する必要があるため、関係研究機関への実験依頼や設備借用費として経費を支出する必要性が生じるものと思われる。さらに、最終年度である次年度は、研究成果の発表にかかる旅費の支出が生じる。
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