2019 Fiscal Year Research-status Report
堆積汚泥に吸着した放射性セシウムの減容化を考慮した効率的除染システムの開発
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17K06969
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡本 強一 日本大学, 理工学部, 研究員 (50256806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠山 岳史 日本大学, 理工学部, 教授 (40318366)
小森谷 友絵 日本大学, 生産工学部, 准教授 (80409086)
平野 廣佑 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 助教 (30758123)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 減容化 / 放射性セシウム / 循環型浄化システム / ファインバブル / 微生物活性剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常ヘドロに吸着しているセシウムを除去することはできない.そこで,セシウムは海底堆積汚泥(ヘドロ)に吸着しているので,このヘドロを分解すれば,セシウムが溶出すると考え,循環型浄化システムを利用した実験を行ってきた.研究の最初の段階で,実験結果は,セシウムは最大20%程度が溶出可能となった.しかし,溶出量が当初の予想よりも格段に低いことからいったん吸着が分離してもう一度吸着したのではないか,すなわち「再吸着」しているのではないかと推測した.本申請では,この推論をさらに推し進めてアイデア化して,当初堆積汚泥の表面にある有機物に吸着していた状態から最終的に砂の主成分であるシリカにセシウムを再吸着させようという考えである.有機物は循環型浄化システムにて分解されるが,堆積汚泥の核となっているシリカは分解されない.循環型浄化システム内に投入されたものが残存する場合その量を最小にするすなわち減容化を行い,効率的な除去システムの開発を目的とした. 本年度は,海水条件下でのシリカ粉末へのセシウム吸着実験を行った.海水および堆積汚泥を用いた循環型浄化システムを構築して行う.塩化セシウムをシステム稼働1時間前に添加・撹拌した.システム稼働,72時間後にシステムを停止した.汚泥を含む海水試料を回収・ろ過し,pHを数種類調整して,吸着率の比較を行った.結果は,特定のpHの時を除いて83%以上の吸着率を示した.特定のpHの時,セシウム吸着性能が発揮されなかったが.等電点があり吸着性能が低減したと推測される. 以前申請者らが提案してきたセシウム除去の方法は汚泥が分解され水中に溶出されたセシウムはゼオライトで固定可能とした.ここでゼオライトは理論上概略500g程度必要となるようであるが,本方法では,60 g程度のシリカ粉末で最低83%のセシウム吸着性能を有し,大幅な減容化が可能となることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,まず,淡水中におけるシリカ粉末へのセシウム吸着実験を行った.蒸留水にセシウムを添加してpHを調整した数種類を作成し,シリカ粉末を添加・撹拌の後セシウム吸着率を調べた結果,40%以上の値を示し,シリカへのセシウム吸着の可能性が示された. 次に海水条件下でのシリカ粉末へのセシウム吸着実験を行った.海水および堆積汚泥を用いた循環型浄化システムを構築して行う.塩化セシウムをシステム稼働1時間前に添加・撹拌した.システムの稼働時間は72時間に設定した.システム停止後,汚泥を含む海水試料を回収・ろ過し,pHを数種類調整した.シリカ粉末添加濃度,撹拌時間および分析方法については淡水の場合と同様とし,吸着率の比較を行った.結果は,特定の場合を除いて83%以上の吸着率を示した.特定の場合では,セシウム吸着性能が発揮されなかった.これは,pH=4.2付近に等電点があり,吸着性能が低減したと推測される.よってpHの制御がシリカ粉末へのセシウム吸着性能に影響すると考えられる. 従来申請者らが提案してきたセシウム除去の方法は汚泥が分解され水中に溶出されたセシウムはゼオライトで固定可能とした.ここでゼオライトは理論上概略500 g程度必要となるようであるが,本方法では,60g程度のシリカ粉末で最低83%のセシウム吸着性能を有し,大幅な減容化が可能となることが分かった. 従って,当初の計画より以上に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
海水条件下でのシリカ粉末へのセシウム吸着実験で,海水および堆積汚泥を用いた循環型浄化システムを稼働する.塩化セシウムをシステム稼働1時間前に添加・撹拌して,システム稼働72時間後に停止する.汚泥を含む海水試料を回収・ろ過し,pHを数種類調整して,吸着率の比較を行った.結果は,特定のpHの時を除いて83%以上の吸着率を示した.特定のpHの時,セシウム吸着性能が発揮されなかったが.これは等電点の時に吸着性能が低減したと推測される. 今年度は,海水条件下でのシリカ粉末へのセシウム吸着に関連して,海水および堆積汚泥を用いた循環型浄化システムを稼働して実験を行う際に, 1)複数回行い,再現性があるのか 2)シリカ粉末へのセシウム吸着の際に,pH調整をきめ細かく行い,pHが特定の場合がどのような状態なのか,等電点であるという確証を得る 以上の2点を重点的に行いたいと考えている.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,水環境学会では「新型コロナウイルス感染の急速な拡大を受けて開催中止となった」ので,年会にて論文発表の為に出張旅費を見積もったが,旅費分に差額が生じた為である.これに関連して補助事業期間延長の申請を行った.来年度の使用計画として,論文発表の為の旅費として有効に使用したいと考えている.
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Research Products
(4 results)