2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K07008
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山澤 弘実 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70345916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森泉 純 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90303677)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モニタリングポスト / NaI検出器波高分布 / 放射性核種 / 環境放射能 / 原子力事故 / 大気中濃度 / 福島原発事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境放射線モニタリング施設(MP)のNaI(Tl)波高分布からの大気中及び地表面上放射性核種濃度推定法の確立のため、昨年度に行った福島県内での測定結果の解析、茨城県内MPデータからの福島原発事故時大気中濃度の評価、及び大気拡散モデルの検証・改良を行った。 昨年度開発を行った放射能濃度土壌中深度分布推定法の検証のための参照データとして、福島県内測定結果の解析では採取した土壌試料のγ線スペクトロメトリによる分析により、地表直下にピークを持ち、概ね双曲線正割関数に従うCs-134, 137濃度分布を得た。土壌採取と同じ場所でのNaI(Tl)検出器測定の波高分布に対して本研究の推定法を適用して濃度及び深度分布を評価した結果、濃度推定値は20-30%で実測と一致し、重量緩衝深度は約35%の不確かさで推定できることが示された。また、水平一様性が推定精度に大きな影響を与えることが示された。 大気中濃度推定では、昨年度までに検討した方法を用いて2011年3月15日午前に茨城県を南下する高濃度プルームについて、新たに11局の濃度を評価した。その結果、同日5:00に内陸部でI-131最高濃度が従来把握された最高濃度の2倍程度である5.5 kBq m-3であることが示さた。また、3:00以前とそれ以降の核種組成が明瞭に異なるり、新たに前者は濃度及び核種組成が空間的に概ね均一であるのに対して、後半部では局在性が比較的高いこと等のプルームの時空間構造が明らかとなった。 大気拡散モデルの改良では、福島原発事故の沈着量の再現性が低いプルームに着目し、再現不良の地域・期間の同定と、沈着過程のモデル化内容の精査を行った。その結果、霧水による沈着過程のモデル化内容の改良が必要なこと、降水による湿性沈着発生判断に用いる閾値の検討が必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NaI(Tl)波高分布からの濃度推定法確立では、より実用性を高めるための新たな検討課題が見出されたものの、地中浸透の影響を考慮した濃度推定について当初の目標である検証を行い、十分利用可能であることが示されたことにより、計画通りの進捗である。 事故初期プルームの多核種大気中濃度解析では、茨城県内の10分平均濃度の評価をほぼ終了し、濃度評価結果を用いた多核種に着目した動態解析に着手したことは計画より進展している。大気拡散モデルの改良も主要点について概ね実施済みであり、ほぼ計画通りの進捗である。 また、I-131の有機態、無機態、粒子状別の割合を評価するための検討を行い、実測データが極めて限られるものの、実測データを合理的に説明できるモデル化が可能である見通しが得られた。これは、当初予定していない成果であり、モデルのさらなる高精度化に寄与する可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果の論文作成を進める。 計画外であるが、I-131の形態別動態を含めるためのモデルの改良を検討する。これと、 NaI(Tl)波高分布から得られた多核種の大気中濃度評価値の解析との組み合わせにより、プルームの大気中動態のより深い理解を目指す。
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Causes of Carryover |
消耗品購入費が想定よりわずかに少なく済んだことにより生じた。 次年度の消耗品購入に充てる。
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Research Products
(6 results)