2020 Fiscal Year Research-status Report
Molecular analysis of neural-specific phosphotyrsine signal adaptor, ShcB and ShcC
Project/Area Number |
17K07111
|
Research Institution | Fukuoka International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
森 望 福岡国際医療福祉大学, 医療学部, 教授 (00130394)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 老化脳 / 可塑性 / 神経細胞 / シグナル伝達 / アダプター / カルシウムイオン / チロシンリン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
長崎大学で行なった実験結果を元に、ShcB欠損マウスの表現型、とくに小脳依存性の感覚運動協調性の機能障害の分子機構について、京都大学へ移籍したDr.柿澤とメール等で密に連絡をとって論文原稿を書き進めて、4月にNature系列誌のScientific Reportsに投稿した。幸い軽微な修正で採択となり、8月に受理された。9月に公開され、これでようやく本研究の主題である「神経特異的ホスホチロシンシグナルアダプターShcB, ShcCの分子機能解析」のShcBについては予定していた論文を完成することができた。 一方、ShcC欠損マウスの表現型とその背後にある分子機構の解析については、すでに過去において一論文を完成させていたが、本研究で目標としたのはShcB,ShcC両遺伝子の欠損における表現型とその背後に現れるであろう分子機構の解析だった。しかし、長崎大学から福岡国際医療福祉大学へ移籍後、研究室の維持が叶わず、マウスの維持を断念せざるを得なかった。 ShcB遺伝子欠損によって、小脳のプルキンエ細胞内のカルシウムストアが維持できないという、当初予想もできなかった驚くべき現象があることを明らかにできたが、どうしてそうなってしまうのか、その先のメカニズムを知ることが重油である。その方向では、ShcBがないことで小胞体へカルシウムイオンを組み入れるSERCAポンプが機能不全となることまで明らかにすることができた。その先のメカニズムはまだ不明だが、周辺の文献を整理するうちに、細胞外からのカルシウム流入に関与するSTIM1のチロシンリン酸化との関係性がもっとも懸念されるところであることに現在もっとも関心がある。それで、この方面に詳しいイタリアのパドヴァ大学にいるDr. Catia Sorgatoとメールで議論を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目標としていたShcB遺伝子欠損マウスでの行動異常の背後にあるメカニズムについてScientific Reports雑誌に論文を公表することができた。その内容の概略は以下のとおりである。 細胞内のCa2+濃度は、細胞外の媒体からの流入と細胞内の貯蔵庫からの放出によって変化する。中枢神経系では、Ca2+の放出は、神経細胞の興奮性や伝達物質の放出など、さまざまな生理現象に関与している。刺激に応じた安定したCa2+の放出は、神経系の正常な機能に不可欠であるが、中枢神経細胞におけるCa2+放出の制御機構は十分に解明されていない。本研究では、中枢神経細胞に発現するアダプター蛋白質ShcBが、小脳プルキンエ細胞のCa2+貯蔵量の機能維持に必須の役割を果たしていることを明らかにした。ShcBノックアウト(KO)マウスは、小脳依存性の運動機能と小脳シナプスの長期抑圧(LTD)に障害を示した。このLTDの低下は、細胞内のCa2+放出の障害を伴っていた。ShcB欠損小脳では、Ca2+放出チャネルの発現やCa2+貯蔵庫の形態には問題がなかったが、細胞内Ca2+貯蔵庫の含有量やsarco/endoplasmic reticular Ca2+-ATPase (SERCA)の活性が大きく低下していた。さらに、ShcB-KO PCにShcBを異所性に発現させると、Ca2+の放出とそのSERCA依存性成分が回復した。これらの結果から,ShcBはSERCA活性の制御を介して,中枢神経細胞のER Ca2+貯蔵庫の機能維持に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
イタリアのパドヴァ大学のカティア・ソルガト教授や京都大学の柿澤晶准教授らとメールで議論を進めて、今回の論文で明らかにした分子機構のさらに先のメカニズムについて、より具体的な提言ができるように議論を進め、仮設レベルではあっても、来年度、最終年度内に総括的な論文を取りまとめたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響もあり、翌年度への研究費の持ち越しを希望し、その間に包括的な総説論文か仮説提案論文を取りまとめる予定とする。残余研究費は論文投稿に必要な経費と、学会等が再開されれば、そこでの研究発表と科学討議への参加、神経老化研究の今後へむけた共同研究打ち合わせ等に使用する。
|
Research Products
(4 results)