2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular analysis of neural-specific phosphotyrsine signal adaptor, ShcB and ShcC
Project/Area Number |
17K07111
|
Research Institution | Fukuoka International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
森 望 福岡国際医療福祉大学, 医療学部, 教授 (00130394)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 可塑性 / 神経細胞 / シグナル伝達 / アダプター / カルシウムイオン / チロシンリン酸化 / 老化制御 / 老化脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
ShcB欠損マウスの表現型、とくに小脳依存性の神経過疎性の低下の原因が、プルキンエ細胞におけるカルシウムストアの枯渇にあること、ShcBがなんらかの形で小胞体へのカルシウムイオンの組み込みと濃縮に必要な神経細胞の小胞体膜上のSERCA2ポンプ機能を維持する上で必須であることを示すことができた(Kakizawa et al., Sci. Rep., 2020)。これにより、本研究の主題である「神経特異的ホスホチロシンシグナルアダプターShcB, ShcCの分子機能解析」のShcBについては目的を達成できた。 しかし、 ShcB遺伝子欠損によって、小脳のプルキンエ細胞内のカルシウムストアが維持できなくなる理由については、その先のメカニズムがまだ理解できていない。これまでの文献上の知見を整理して想定される分子機構を推定する努力を続ける。 一方で、小脳でのカルシウムストア制御が老化による影響をうけることは十分に想定され、事実、大脳の海馬における神経可塑性の減退は頻繁に観察されることから、小脳可塑性も老化の影響を強く受けることが考えられる。そのしくみの一部には、これまで研究で明らかになったShcBを介したSERCA2ポンプの機能維持重要と考えうる。老若マウスで、その機能的変化がどの程度あるかを検討する研究を進められるよう準備してゆく。現所属の大学ではその方向での実験研究ができないので、以前の共同研究者たちと連携して実験が遂行できるよう努力する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ShcB遺伝子欠損によって、小脳のプルキンエ細胞内のカルシウムストアが維持できなくなることを明らかにしたが、その理由については、その先のメカニズムがまだ理解できていない。その点について、分子的にはSERCA2に作用する分子周辺の文献を整理するうちに、細胞外からのカルシ ウム流入に関与するSTIM1のチロシンリン酸化が寄与する可能性があると考え、その関連文献の調査研究を進めている。 また、小脳の神経可塑性は老化とともに減退する。その老年性変化の原因を探るべく調査研究を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
小脳の神経可塑性に関してShcBがカルシウムストア制御を通じて寄与することを論文として公表できたことは大きな成果となった。しかし、 ShcB遺伝子欠損によって、小脳のプルキンエ細胞内のカルシウムストアが維持できなくなる理由については、その先のメカニズムがまだ理解できていない。ただし、長崎大学を定年後移籍した大学では、いわゆる分子細胞生物学系の実験施設を整備することができず、従来の研究が継続できない。そこで、プルキンエ細胞におけるカルシウムストア維持へのShcB関与の分子機構については、カルシウム輸送関連の論文を調査することで、新しい仮説を提唱する方向での理論的研究を進める。特に、細胞外からのカルシ ウム流入に関与するSTIM1のチロシンリン酸化が寄与する可能性があると考え、その関連文献の整理を進めている。 また、野生株におけるShcB存在下においても、老化とともにこの小脳依存性神経可塑性は減退する。その場合、その老年性機能減退の主因がどこにあるかを知る必要がある。その観点からすれば、広く老化脳における神経機能の低下について調べていくこともこの研究の延長線上にある。老化脳における機能低下や、現在の所属である「視能訓練」に関係したこと、すなわち眼科領域での神経応答性の老年性変化について調査研究を進めている。文献調査が主体の作業だが、老化脳における神経機能低下の分子機構について、広い視点から興味深い現象を解き明かしてゆく、あるいはまとめていくことを最終年度の目標とする。 これまで40年ほど老化の分野で研究を続けてきた。すでに定年も経験し、その前後で申請した新たな研究が採択されることはなかなか難しいと感じている。これまでの老化研究全体を俯瞰しつつ周辺の研究成果を包括的に整理することも、次の時代への礎となりうる。その意味で、老化研究全体を取りまとめる努力もしてゆきたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響もあり、翌年度への研究費の持ち越しを希望し、その間に包括的な層説論文か仮説提案論文、またこれまでの40年ほどの研究者人生の中で進めてきた老化研究全体を総括する論文や書籍のとりまとめを進める。残余研究費は論文投稿に必要な経費と、学会等が再開されれば、そこでの研究発表と科学討議への参加、神経老化研究の今後へ向けた共同研究打ち合わせ、老化研究全体のとりまとめに要する費用に使用する。
|
Research Products
(5 results)