2017 Fiscal Year Research-status Report
Structural studies on meta-stable conformations of bisected glycan
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17K07303
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長江 雅倫 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任研究員 (60619873)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 糖鎖生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖は運動性が高く、溶液中で複数の準安定構造の動的な平衡状態として存在する。糖鎖は配列に固有の準安定構造と分布を持つと考えられるが、「配列と立体構造の相関」に関する研究は蛋白質や核酸と比較して遅れている。本研究の目的は、代表的なN型糖鎖であるバイアンテナ型糖鎖の「配列と構造の相関」を明らかにすることである。 本年度はバイアンテナ型糖鎖に特異的な植物レクチンであるOrysataレクチンとバイセクト型糖鎖に特異的な植物レクチンであるCalsepaレクチンを用いて、フロンタルアフィニティー、X線結晶構造解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせることで、特異性決定のメカニズムを多角的に調査し、結果をGlycobiologyに論文としてまとめた。 具体的には、二つのレクチンについて産総研の舘野博士のご協力によってフロンタルアフィニティーを行い、一連のN型糖鎖について親和性の測定を行った。その結果、Calsepaレクチンに対しては以前の報告通りバイセクト型糖鎖に高い親和性を示した。一方Orysataレクチンは1-6アームが伸長したバイアンテナ型糖鎖に高い親和性を示した。そこで二つのレクチンとバイアンテナ型糖鎖との複合体のX線結晶構造解析を行い、それぞれ糖鎖との認識様式を原子分解能で明らかにした。得られた構造はCalsepaレクチンについては親和性解析の結果と一致したが、Orysataレクチンについては親和性解析を綺麗に説明できるものではなかった。そこで結晶構造を基に分子動力学シミュレーションで溶液挙動を調べた。その結果、結合エピトープではない部分の糖鎖がエントロピー項に大きな影響を与え、結果として親和性に寄与するということがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はバイアンテナ型糖鎖に特異的な植物レクチンであるOrysataレクチンとバイセクト型糖鎖に特異的な植物レクチンであるCalsepaレクチンを用いて、フロンタルアフィニティー、X線結晶構造解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせることで、特異性決定のメカニズムを多角的に調査し、結果をGlycobiologyに論文として報告することができた。この結果は、レクチンとの相互作用に寄与しない部分、非エピトープ領域の構造の安定化がレクチンとの相互作用という大きな系全体のエネルギーに大きな影響を与えることを示しており、柔らかい糖鎖の溶液挙動の本質的な側面を明らかにしたと考えている。また当初提唱していたエントロピー駆動型の特異性決定機構を部分的に証明できたと感じている。 研究当初はラベル化糖鎖を用いたNMR測定を想定していたが、糖鎖とレクチンとの複合体をリガンドを変えながら分子動力学シミュレーションすることによって、熱力学的なパラメータを定性的に比較することが可能であることが明らかになった。これは予想外の収穫であり、今後のさらなる展開が可能になった。 また現在進行形のテーマとして分岐構造を生み出す糖転移酵素Xの結晶構造解析も行っている。この酵素はN型糖鎖の構造を精密に認識することが以前から示唆されており、基質認識メカニズムを明らかにすることは、本研究の目的である「糖鎖の配列と機能の相関」を明らかにすることにつながると考えており是非とも進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の項目2)として、「レクチンによるエントロピー駆動型の特異性獲得メカニズム」の証明に向けた準安定構造特異的レクチン、CalsepaレクチンとOrysataレクチンの熱力学的解析を行う予定にしていた。これに対して我々は、二つのレクチンとリガンドであるバイアンテナ型糖鎖との複合体のX線結晶構造解析を行った。そして得られたレクチンと糖鎖との複合体の原子構造を基に、新しい糖鎖リガンドをコンピューター上でデザインし、それについて分子動力学シミュレーションを行うことで熱力学的パラメータを見積もり、自由エネルギー変化を定性的に比べることを行った。得られた結果はフロンタルアフィニティーの実験結果を十分説明できるものであった。従って本項目は達成できたと考えている。 しかし本来の研究目的である「糖鎖の配列と準安定構造の相関」はまだ十分に解明できていない。これは糖鎖構造を生み出す糖転移酵素の構造があまりにも少ないことであることに気づいた。これでは対象となる糖鎖を簡便に生産することができない。そこで今後は糖転移酵素の基質認識に重点を置いた研究を展開したい。本研究が想定している糖鎖はN型糖鎖の一種であるバイアンテナ型糖鎖とその誘導体(バイセクト型糖鎖、ダイシアロ型糖鎖、β1-6分岐構造)である。こうした糖鎖を生み出す糖転移酵素はそれぞれの構造の特徴を有効に認識しているはずである。今後はこれらの糖転移酵素の構造解析を通して基質認識のメカニズムから糖鎖の配列と構造の相関を調べたい。
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[Journal Article] 3D structural analysis of protein O-mannosyl kinase, POMK, a causative gene product of dystroglycanopathy.2017
Author(s)
Nagae M, Mishra SK, Neyazaki M, Oi R, Ikeda A, Matsugaki N, Akashi S, Manya H, Mizuno M, Yagi H, Kato K, Senda T, Endo T, Nogi T, Yamaguchi Y
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Journal Title
Genes to Cells
Volume: 22(4)
Pages: 348-359
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Crystallographic analysis of murine p24γ2 Golgi dynamics domain2017
Author(s)
Nagae M, Liebschner D, Yamada Y, Morita-Matsumoto K, Matsugaki N, Senda T, Fujita M, Kinoshita T, Yamaguchi Y
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Journal Title
Proteins, structure, function and bioinformatics
Volume: 85(4)
Pages: 764-770
DOI
Peer Reviewed
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